どうしてその仕事してるの

グランド・ブダペスト・ホテルのどうしてその仕事してるののレビュー・感想・評価

3.9
スタートは墓地。一人の女性がある作家の銅像の前を訪れる。
銅像の作家は「グランド・ブダペスト・ホテル」の著者。
著書「グランド・ブタペスト・ホテル」は、
1968年8月に著者がそのホテルを訪れた時に出会った
ゼロ・ムスタファの語った出来事を書き記したものである。

ゼロ・ムスタファはこのホテルのオーナーであり、
移民からそのホテルのオーナーにまでなった大富豪。
彼の語った物語は1932年の出来事であった。

と、物語が入れ子状になっている。
文章で書くと複雑っぽいが
観ているとすんなり理解できる。映像の説得力。

さて、前置き長くなっちゃったけど
本作を登場人物の職業観視点で見てみよう。

様々な登場人物が居て、それぞれに面白いのだが
(ウィレム・デフォー氏演じる殺し屋ジョプリングも
 めっちゃ面白いと思うのだけど、
 彼に焦点を当てるともう、私の感想の対象の職業が
 殺し屋ばっかりになっちゃうので(※1)今回はやめとく)
やはり最も興味深いのはゼロ・ムスタファの物語。
彼は、特に思い入れもなくベルボーイに就職するが
運命のいたずら(?!)でホテルオーナーにまでなっていく。
そのわらしべ長者的展開には
彼の上司に当たる名コンシェルジュ「グスタヴ・H」の存在が不可欠。

グスタヴの教えと存在によりゼロ自身も成長し変容し
時を経て名コンシェルジュになっていく。
その様はテンポよくコミカルに描かれている上に
本筋ではないのでさらっとしたものではあるが
「人の人生を方向付けるのに偶発的要素は大いに意味を持つ」
という点がよく表れていて面白い。

また、この映画の監督はそんなこと意図していないとは思うが
仕事に於いて愚直なまでに真摯に取り組む意義が
意外とがっつり押し出されている作品。

時の流れの表現が何とも言えない物悲しさを漂わせる点も
人生を感じさせられて趣深い。

(※1 登場人物の職業観視点で感想を書き始めて
    3作目の時点でニキータとレオンの感想が含まれていたため
    感想のうち2/3の職業が殺し屋という偏った事態
    になったという過去を反省♪)