OASIS

アイ・ウェイウェイは謝らないのOASISのレビュー・感想・評価

4.0
国家に対して痛烈な批判を続ける中国を代表する現代芸術家アイ・ウェイウェイを追ったドキュメンタリー。

見た目はずんぐりむっくりの小汚いおっさんだが、天安門に中指を立てたり、「クソくらえ、祖国」とひたすら国家をなじるアウトサイダーぶりが「何この人、カッコイイ!」と思わせる。
北京オリンピックの主会場「鳥の巣」をデザインしたのがこの人だというから驚き。

四川大地震によって5000人以上の子供達が亡くなり、それを隠蔽しようとする国へ立ち向かうべくインターネットやTwitterを駆使して炎上騒ぎを起こし、その結果四六時中監視される生活を強いられる事になるアイ・ウェイウェイ。
しかし、仲間の芸術家達が煽動罪で捕まっても挑発、警察に殴られて病院送りになっても挑発、堂々と屋台の外で飯を食って挑発と、とことん煽っていくスタイルなのが見ていて気持ち良い。
彼の作品は芸術的にはそれほど深みな無いが、メッセージとしては直接的過ぎる程にダイレクトで、笑ってしまう事もしばしば(コートの中からコンドームを覗かせてみたり)。

何と言っても、インターネットや端末を使って大衆の国家への怒りを増幅させて行く様子が現代芸術家らしくて良い。
その一粒一粒に込められた念、フォロワー達の想いが一億粒のヒマワリの種アートで開花する様は感動的だし、「私ほど常に恐怖を感じている者はいない」という言葉から、人々の国家への恐怖を象徴する存在として彼の発言が欠かせないものであるのも分かる。
Twitterの魅力は良く分からないが、こういった使い方こそ真に正しい方法じゃないだろうかと思えた。

中国で地震が発生したというニュースが起きる度、震度2や3という小規模な揺れでも建物が簡単に壊れていく映像を見る事はあるが、やはりそこには手抜き工事が横行した結果もたらされた「おから建築」の影響が多大にあって。
オリンピック誘致の為に中心部から追い出されて行き場を無くした市民が欠陥住宅の倒壊に見舞われるという悲惨な状況に、見た目の豪華さとは真逆な中国の闇を見た気がした。
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