OASIS

とらわれて夏のOASISのレビュー・感想・評価

とらわれて夏(2013年製作の映画)
3.7
アメリカ南部の静かな街で暮らすシングルマザーの前に逃走中の脱獄犯が現れ、脅迫され匿う事になる。しかし、危害を加えず息子にも優しく振る舞う彼の姿に次第に惹かれていくという話。
監督は「ジュノ」のジェイソン・ライトマン。

まず初めに「とらわれて夏」という邦題がとても良かった。
観る前には「愛なんていらねぇよ、夏」みたいな変なタイトルだなと思っていたが、鑑賞後になると終わった後に抱いたイメージとピッタリ重なるし、邦題を考えた人は映画をしっかり細部まで観てテーマを理解してつけているなと思いました。

見ず知らずの男に「とらわれて」徐々に人を愛する事を思い出し、そしてその過去にまた「とらわれて」真実の愛を知る。
そんな愛に飢えたシングルマザーという役柄にケイト・ウィンスレットがピタリとハマるし、ゴツゴツとした手で機械いじりや料理をするワイルドな魅力を持つ男を演じたジョシュ・ブローリンもまた良かったと思います。
二人の距離が最初から近過ぎるだろうだとか、スキンシップ取るまで随分早いなという感じはありましたが。

しかしこの映画が良かったのは、母では無くて主にその子供目線で描かれて行く所。
父と別れ母の元へ一人だけ残り、寂しげな彼女にとってかけがえの無い存在の少年。
彼の前に母を本当に愛してくれるかもしれない男がやってくるが、二人が親密になる程やきもきしてやり切れない気持ちが募って行く。母の幸せは願うが、女としての顔は見たくはない。
この思春期の瑞々しく揺れ動く心を見事に表現していた子役の演技は素晴らしく、同じく両親に振り回される女の子との淡くも初々しい恋模様も良かったと思います。

少年が成長した後もあの夏の出来事が大きく未来に影響しているし、母と男もまた過去の愛にとらわれている。
終わってみれば登場人物全員が何かしら過去にとらわれている話ですが、それが重荷とはならずに確実に良い方向へと進んでいる点が良かったと思います。
三人で作ったピーチパイがやたら美味しそうに見えるし、それが重要なキーになっていたりして。見終わった後は無性にピーチパイが食べたくなりました。
そしてそのシーンがやたらめったらエロいという...。
ケイトの色気とブローリンの男臭さ、そして白桃の甘さが絡み合って凄い匂いが立ち込めてきそうでした。

青年へと成長した姿がトビー・マグワイアというのもナイスキャスティングでした。

@大阪ステーションシネマ
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