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レイルウェイ 運命の旅路のOASISのレビュー・感想・評価

レイルウェイ 運命の旅路(2013年製作の映画)
3.9
第二次世界大戦中に日本軍の捕虜として鉄道建設に従事し非道な扱いを受けたトラウマを抱える男性が、その現場で当時通訳として働いていた日本人男性が生きていると知り再会する覚悟を決めるという、実話を基にした映画。

過去を思い出す度に、心に受けた傷が疼き出す英国人男性エリック(コリン・ファース)と、それを支える献身的な妻パティ(ニコール・キッドマン)、そしてエリックの目の前に現れたかつての敵ナガセ(真田広之)。
三者の演技に終始引き込まれつつも、かつての日本人が行った非道な行いをまざまざと見せつけられますが、現在と過去を行き来する構成で最後までダレずに観る事が出来ました。

前半ではエリックとパティの出会いから結婚、そして過去の記憶のフラッシュバックによって苦しめられる夫の為に、彼を救おうとする妻の姿が描かれます。
エリックと同様に捕虜となっていたフィンレイ(ステラン・スカルスガルド)から基地での地獄の体験を聞かされ夫の苦しみを追体験した彼女が、その予想以上に大きくて根深い傷でさえも癒してあげようとします。
しかしその傷は、ニコール・キッドマンのような美しくて眩いばかりの存在が近くに居ても癒える事は無く苦しめ続けます。

そして後半では、エリックを苦しめた元凶ともいえる存在のナガセとついに対峙する事になります。
かつての尋問する側とされる側という構図が逆転し、エリックは同じく贖罪の日々を送るナガセの傷を抉るように彼を問い詰めます。
戦争によって残った傷は戦いが終わったからといって癒される物では無いし、行き場の無い怒りや苦しみを全てが終わった今どこにぶつければいいのか分からないという両者の想いがぶつかる対面シーンはいたたまれない気持ちで一杯でした。
だからこそエリックが下した勇気ある決断は、それまでの苦しみから開放されたかのように感動を呼び起こしてくれました。
彼の決断は、やはり隣に妻パティの存在が無ければ成し得なかった事であるし、ノンフィクションだからこその説得力があると思います。
その後の二人の友情関係の中には、必ず妻パティがいたわけですから。
ラストのツーショット写真にもジーンと来てしまいました。

そして、形はどうあれ両者を結びつけた存在である鉄道についても、車両だけではなくその下にあるレール一本一本にまでそれに携わった人の生涯の重みを感じずにはいられなくなりました。
「鉄道マニア」と呼ばれる人達はカッコ良い車両にカメラを向けるのも良いですが、しっかりと下にも目線を下げてほしいものですね。

日本人ならば観ておくべき映画だと思いましたが、監督が日本人では無い以上「終戦のエンペラー」のように大幅に脚色されているかもしれないという点は気になります。
いくらなんでもエリックとパティの出会い〜結婚の流れが早すぎるし、献身的な愛にいつ目覚めたんだと思わざるを得なかったし拷問の描写と和解の描写のバランスも気になりました。
しかし、俳優陣の演技は本当に良く特に真田広之さんは素晴らしかったです。
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