もじゃ太郎

インセプションのもじゃ太郎のレビュー・感想・評価

インセプション(2010年製作の映画)
4.5
クリストファー・ノーラン監督の最新作『TENET』の劇場公開が始まった。想像の世界を扱っているという点で最新作は本作に近いものがある。昔挫折した本作を理解することでクリストファー・ノーラン監督の思考を理解して最新作の理解の一助になると思い、解説を読んで復習することにした。結果、なんとかこの映画の面白さを理解できた。この難解で何度か見ないと分からない深さと議論を呼びそうなエンディングは宮崎駿の映画に近いものを感じた。アニメならまだしも、実写で撮ってしまうところに米国の凄さを感じる。

簡単に言えば、サイトウさんのライバル企業の跡取りが見ている夢に会社をダメにするよう「植え付け」を行うという話。想像の話なのにまるで科学的に説明できるかのように緻密だ。だから、説得力があるように感じる、感覚的に理解できるのだと思う。実は前半で①インセプションとは?②夢の中が多層構造になっているという説明と夢が設計できることの説明、③夢から覚めるには、④夢か現実か理解するには?といったこの世界のことについて丁寧に説明してくれていたけどそれを理解できなかった自分が恥ずかしい。

さらに、本作の映像表現の質が高いこと。ただでさえ、夢の中という無限の可能性を持つ世界なのに、それを具現化するなんて!芸術点に500万点くらいあげたい。

この緻密なストーリーと映像表現の両輪により圧倒的な映像作品が出来上がったと思う。

過去の自分を擁護するわけではないが、設定に謎が残る部分もあった。1つ目は、なんで第1階層で早速起こる想定外の事件が起こった時点で軌道修正しない?という素朴な疑問。2つ目は、コブの精神的脆さ。誰にでも弱点はあるのかもしれないが、この仕事に向かない気がした。でもこれらの疑問も夢だから、完全なものなんてない、という論理で一蹴できるかもしれない。

面白さ、カッコ良さが上回って総じて良い作品でした。鑑賞に当たってはネタバレでもストーリーを理解した上で映像技術の凄さを体感することがこの映画の正しい鑑賞方法だと個人的に思いました。