JunIwaoka

トム・アット・ザ・ファームのJunIwaokaのレビュー・感想・評価

4.0
2014.11.1 @ 新宿シネマカリテ
(原題:Tom A La Ferme)

これまで同性愛というパーソナリティに固執し、受け入れてもらえない母親との対峙をテーマに描き続けてきたグザヴィエ・ドランが、まるでハネケ作品のような息の詰まるサイコサスペンスを展開するとは思わなかった。昨年の東京国際映画祭では酸欠状態になってコテンパンにされたのでリベンジ。
農場という幽閉された環境下で、掛け替えのない存在の喪失感を埋め合う奇妙な相互依存関係。恐怖による支配を受けながらも、耐え難い空虚を紛らわせために受け入れるしかない不気味さは、助け出されることを望みながら同時にそこに残りたいと望むトムの狂乱とした笑顔が象徴する。相変わらずドランの美的センスはズバ抜けていて、居心地の悪さを感じさせる画の構図や、ここぞとばかりにかかる音楽がトムの緊張感や焦燥感をいちいち駆り立て、どんどん追い込んでいき気が滅入る。またハンドルを強く握るシーンに代表されるよう、王弁に語らないのに訴えかけるものが強烈で、望まない行く末を想像させて観ているこっちまでその恐ろしさから逃れられなくなる。
理不尽な従順関係をカナダとアメリカの関係性に置き換えるところは、これまでのパーソナリティを越えた新境地かと思ったけど、"お前には飽き飽きだ〜"なんて、それまでの緊張感から一転して、あまりにもシュールすぎた。なんだあれは。
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