JunIwaoka

それでも夜は明けるのJunIwaokaのレビュー・感想・評価

それでも夜は明ける(2013年製作の映画)
4.0
(原題:12 Years a Slave)
2014.3.8 @ TOHOシネマズ 渋谷

毎度文句言うのも気が引けるけど、いかにも"ショーシャンクの空"的なストーリーを思わせる邦題は酷い。夜が明けるような希望はないよ。人として生きることを諦めなかった信念に救いはあるけど、ハッピーエンドはなくその後も戦い続けなきゃいけないんだからさ。
前作同様に余計な感傷を排して、冷徹にとらえる視線は変わらず。淡々と映す虐待の過酷さが訴えかけることは、人間が持つ残忍さ。時代や地域で命の重さが違っていたとしも、善人ですら奴隷を人と思わない社会の恐ろしさだ。ポール・ダノのクソ野郎っぷりと、マイケル・ファスベンダーの鬼畜っぷりが凄く、それでも手を差し伸べる意志があるのか問われているようだった。特に首吊りのシーンの無関心さはあまりに残酷で直視していることが辛かった。
当時のような奴隷制度はないにしても、貨幣制度の社会に平等はありえない。この残忍さが過ぎ去った愚かな歴史ではなく、人間の本質だという警告。そして苦境のなかでも人権を持つことへの渇望。その説得力に圧倒された素晴らしい作品だった。
感情を持つことすら許されないなかで、音楽を人権の象徴とする描写が素晴らしい。人種差別はブラックミュージックの起源であり、歌に込めるソウルは生きているという証だ。
JunIwaoka

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