OASIS

それでも夜は明けるのOASISのレビュー・感想・評価

それでも夜は明ける(2013年製作の映画)
4.0
1841年、自由黒人である音楽家ソロモン・ノーサップが拉致され奴隷として売られてしまったという実話を基にした映画。
監督は「SHAME」のスティーブ・マックィーン。

上映中はムチで打たれ続けるような苦痛を味わうが、解放された瞬間に確かな感動を呼ぶ力作。

楽しげな生活が一転しわけもわからない状況で暗闇に放り出される冒頭部分から、主人公視点でその恐怖の世界に入り込まされる。
長回しを多用する事によって「この事実をしかと目に焼き付けよ」と言わんばかりにただただ絶望の状況を映し出してくる。
こちらもその姿勢に真っ向から向き合い、黒人奴隷の実態から目を背けずに観る事を試され、強要されるような感覚を味わった。
劇中で流れる歌も印象的で、場面が変わっても流れ続ける歌達は、こういった歴史は事実であり全ての出来事が地続きになって今の私達の生活が成り立っているのだと訴えかけてくるように思えました。

鬼畜にムチを振るい続け、役に入り込み過ぎて自分自身と演技の境目が無くなる程過酷な役柄を演じたマイケル・ファスベンダーを始め、豪華キャスト陣の熱演も光ってました。
ポール・ダノなんかは嫌いになってしまうくらい憎たらしいし、特に女性奴隷を演じたルピタ・ニョンゴの演技は誰もが賞賛せざるを得ない程に涙を誘う。
そして、自らも制作に参加して一番おいしい役どころを持って行くブラッド・ピットのイケメン具合にも惚れる。
けれど、彼がもし居なかったら奴隷としての生活が永遠に続いていたかと思うとまた恐怖を覚えました。

自由を求めて逃亡を繰り返し、幾度となく希望が砕かれても諦めないソロモンの心には素直に感動と勇気をもらえる。
けれど、彼にとっての夜は明けても残された奴隷達の長い長い夜は明けずに未だ戦いは続いているという余韻を残す。
そんなメッセージと共に、重低音で不安感を煽り続け時に感傷的な旋律でメリハリを効かせるハンス・ジマーのスコアや奴隷達の歌と同様に「力強さ」を感じさせる映画でした。
ただ、もう一度観るには精神的にも相当応えそうです。
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