emily

そこのみにて光輝くのemilyのレビュー・感想・評価

そこのみにて光輝く(2013年製作の映画)
4.8
パチンコばっかりしてる達夫は拓児と出会い自宅に招待される。父は脳梗塞で寝たきりだが、性欲だけはあり、ひきりなしに妻の名を呼ぶ。姉は売春をして生計を立てている。姉の千夏と達夫は惹かれ合うようになり、厳しい現実に向かっていく。

拓児の家で達夫が千夏のつくったチャーハンを、食べるシーン。隣の部屋では父の性欲を満たす母。

こんなシュールな映像から始まり、一気に虜になった。
まず人物設定が完璧で、髪の毛のパサつきや、何ヶ月も美容室に行けてない感じだったり達夫の覚めた目だったり、内側がしっかり外見に現れてる。

辛い現実を対比するように自然の美しさ、夕日だったり、森だったり、朝顔だったり、そこに配置された人物の位置や配分まで完璧で、厳しい現実でも自然は無情にも美しいさまをありありと映し出す。

現実は厳しくとも達夫、拓児、千夏は愛に溢れていて純粋で、全くひねくれてないところも魅力的。
純粋だからこそ引き起こす悲劇にはなりますが、やっぱりそこがしっくりくる。

ラストシーンも絵が美しく、光の絶妙な加減はまばゆく、明るい未来を映し出す。

側からみて辛い現実であってもそこでしか生きられない人も居る。もちろん美しいものは平等で、手を伸ばせば届くかもしれない。でも現状はそんな単純ではない。
人が強くなれるのは大事な人ができたとき。
守りたい人ができたとき。
愛する人が居れば、一緒に分かち合える人が居れば、少しは光が見えてくるかもしれない。
emily

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