OASIS

そこのみにて光輝くのOASISのレビュー・感想・評価

そこのみにて光輝く(2013年製作の映画)
3.6
毎日パチンコばかりしてブラブラと過ごす男達夫が、パチンコ店で知り合った青年拓児と仲良くなり、家に招かれた事からその姉である千夏に惹かれていくという話。

俳優陣の演技が軒並み良く、特に池脇千鶴の脱ぎっぷりは素晴らしかった。「ジョゼと〜」の時よりも肉感的になった体で見せるベッドシーンの粘着質ないやらしさと生々しさがたまらない。
主演の綾野剛は今までただカッコつけただけの雰囲気イケメンだとしか見ていなかったので、この映画で見せるダメ男演技には好感が持てて株が上がりました。
この二人がラストで見せるベッドシーンは函館の街のネオンが実に良い仕事をしているし、千夏が暮らすホワイトトラッシュ風な住まいのいなたい感じだとか、美術的な部分での雰囲気作りに力が入ってました。
そして、鍋のまま出されるチャーハンやジンギスカン、カレーやお祭りの屋台グルメなど、出てくる料理がとにかく全部美味しそうに見えてお腹が減る映画でもありました。

トラウマを抱えた達夫と老いた家族を養う為に体を売る千夏。そして姉の為に事件を起こす託児。
達夫が千夏と家族になろうと思えば思う程、その家族のどうしようもなさが重みとなってのしかかってくる。
家族になるという事は、愛する人のバックグラウンドにある全ての物を背負う事になるという重さが伝わってきました。
だからこそ、千夏の愛人が言っていた「家族がいるからオカシクなるんだ」という言葉にも重みが出る。
この言葉が映画全体のテーマであると思いました。

千夏を愛しようとする程、彼女は家族によって追い詰められて、逃げ場の無い場所に追いやられていくという絶望感。
それでも、達夫は彼女とその背後にあるものを全て背負おうとする覚悟をするが、その先には闇しか待ち受けていない。
そんな「底」の「其処」に居る二人を朝日だけが優しく包み込むが、そこにあるのは希望の光だけでは無いのが辛く、結局絶望的な状況は何も変わってないじゃないかと落ち込んでしまう話でした。

@テアトル梅田
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