OASIS

はなしかわってのOASISのレビュー・感想・評価

はなしかわって(2011年製作の映画)
3.8
マンハッタンに住み多くの友人を持ったジャズドラマーが、人助けに奔走するという様子を描いた映画。

冒頭は、Dr.HOUSEでお馴染みのヒュー・ローリー似の風貌をした主人公が、配管を修理している場面から始まる。
裸の美女がやって二階から降りてきて代金を払いお礼のハグをすると、それに動じずお金をパンティの中に差し入れるその所作がいやらしくなくてダンディズムを感じさせる。

街に飛び出し、赤いコートを羽織りブルックリン橋を見つめながら「ここから飛び降りようとする人達はどんな人なのかしらね」と意味深な事を言う女と出会う。
彼女と別れた直後に飛び降り自殺のニュースが飛び込んできて「あの女かもしれない」と気が気でない彼。

ドラムのオーディションや窓の輸入事業、映画のプロデュースなど様々な分野に手をだすが、どれも鳴かず飛ばずでお金もそれほど稼いではいない。
行く先々で、荷物運びの手伝いやタイプライターの修理など困った人達の手助けをするが、特別に見返りを求めるわけでもなく。
「この靴、服に合ってるかな?」と若い女性達にも気兼ねなく話しかける姿からも人受けの良さが滲み出ていた。

彼を見ていると「人徳」という言葉の意味を考えさせられる。
徳というものは自ら得ようとして得られるものではなく、日頃の行いによって蓄積されていくものだと。
器用貧乏な彼だが、誰に対しても何に対してもほっとけない体質によって知らずの内にそれを引きつけているようだ。
しかも何の気なしにサラリとやってのけるのだから、「カッコいい」と意識して同じ事をやろうとしても押し付けがましくなってしまうだろう。
それは、身に付けようと思っても絶対に彼と同じ様には出来ない日々の積み重ねの賜物である。

惜しむらくは、彼がもう少しブルックリン橋に留まっていたとしたら飛び降りてしまったある人物の気持ちを変えられたかもしれないという事。
それも考慮しての「生きるさ!」という事なんだろうか。

いずれにしろ、彼の押し付けがましくない人日への善意の向け方は見習いたい所であると思いました。
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