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寄生獣 完結編のYAJのネタバレレビュー・内容・結末

寄生獣 完結編(2015年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

【誰かが思った】
 
 今観る映画として、伝染病やパンデミック系の作品紹介が多いけど、YAJ的には断然これ、『寄生獣』がイチオシでしょうか。

『地球上の誰かがふと思った  人間の数が半分になったらいくつの森が焼かれずにすむだろうか……』
『地球上の誰かがふと思った 人間の数が100分の1になったらたれ流される毒も100分の1になるのだろうか…』
『誰かがふと思った 生物(みんな)の未来を守らねば…』

 この冒頭のモノローグからして何をかいわんや。子どもの頃から読み続けていた手塚治虫に通じる、生命の根源、その存在意義に思い至る深い深い作品です。逆説的に、今の時代になぜ新型コロナが流行しているのかを考えさせられます。

 猟奇的、スプラッターな導入に臆せず、その深い作品テーマに触れて欲しいなと思います。



(ネタバレ、含む)



 前編(2014)は、当時日本―ロシア間の移動の間に機内上映で観た。VFXの使い手山崎貴監督とあって、なかなかの出来栄えと驚いた。その後完結編を観忘れていたので、この機に一気に通して観れてよかった。

 原作を読んでから時間も経っているので、エピソードのあれこれを入れ替えたり削除したりしている点は然程気にならなかった。配役も、田宮涼子の深津絵里、後藤の浅野忠信と、私の持つ原作キャラのイメージとかなり近くて真に迫る演技に圧倒された。
 なによりミギーを演じた阿部サダヲの声が、知的でユーモラスなミギーを上手に表現していると感心。原作でも数々の名言を発するミギーだけど、阿部サダヲの声で聞いて、より心に届く気がした(少し早口過ぎるかなと思わないでもないけど)。

 人口爆発、大気汚染、自然破壊etc. etc., 地球に悪影響を及ぼす人類に対し、上記したように、果たして地球にヒトは必要なのか?と『誰かがふと思った』から今の現状があるとしたらどうだろう? 新型コロナが流行し、ロックダウン等々で人々の経済活動が停滞したことで、少なくとも世界主要都市における大気汚染は改善されているとCNN等の報道で報じられている。(ご参照
『生物(みんな)の未来』が守られる方向に事態は動いているとも取れる。

 とはいえ「座して死を待つよりは出て活路を見出さん」(by 諸葛孔明)が、ヒトのヒトたる所以でもある。悲しいかな。いずれ新型コロナも制圧される(もちろんヒトとして自分もそれを願っている)。
 それでも、この『寄生獣』という作品は示唆に富む問いかけを我々に投げかけるのだった。

 ミギーの名言とされる場面。人類である主人公の泉伸一が、人肉を捕食するパラサイトたちを「悪魔」と評したのに対し、ミギーはこう返す、

“シンイチ・・・『悪魔』というのを本で調べたが、いちばんそれに近い生物は、やはり人間だと思うぞ・・・”

 今、観るべき作品!
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