めんたいこ

早熟のアイオワのめんたいこのレビュー・感想・評価

早熟のアイオワ(2008年製作の映画)
4.0
早熟のアイオワじゃないんだワ。

原題はThe Poker House。言うまでもなく原題の方が1000倍良い。本作のテーマは"早熟"そのものにあるわけではなく、ポーカーハウスという"場"によって無理やり大人達の都合の良い存在として引きずり出された少女たちの物語なのだ。邦題では意味が180度違ってしまう。噴飯ものと言わざるを得ない。(というよりそもそも早熟というワード自体がマッチしておらずミスディレクションしていると思う)

内容について話を戻そう。まずはキャスティングについてだが、主人公アグネスを演じるジェニファー・ローレンスがさすがの演技を見せる。クロエ・グレース・モレッツも可愛らしいが、言葉によるテーマへの付言が多すぎるきらいがある。演技力もそれなりな印象なので、単純にセリフを削ったほうが良かったのでは。

またソフィア・ベアリーは立ち位置的にも微妙な扱いだったと思う。アグネスから無償の愛を与えられる存在としてはビジュアル的にも振る舞いとしても年齢としても無理があるし、ストーリー的に次女ならではのオトナとコドモの間としての役割を与えるべきだった。本作は監督であるロリ・ペティの自伝的物語らしいが、映画内では「事実だから次女を用意しました」という程度の描かれ方になっていると思う。残念だ。

脚本・演出としては残酷だが刺さるものが多く、やるせない気持ちにキッチリさせてくれる。また会話劇の側面からも非常に面白い。オシャレな返しがいっぱい出てきて視聴者が照れくさくなってしまうほど。ただこのオシャレさがある種リアリティを削いでしまっているように感じるところも事実だ。人生は気が利いたセリフで満ち溢れていないのだ。特にポーカーハウスではそうだっただろう。

救いのない状況だが、彼女らの強い佇まいには勇気づけられる。観客を選ぶタイプの映画だし、彼女らが置かれた家庭環境にオーバーラップする部分がある人は視聴を避けたほうがよいかもしれない。しかし、良い映画にはかわりはないだろう。オススメです。