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パージのTTのレビュー・感想・評価

パージ(2013年製作の映画)
2.0
今年1、2を争うほどツッコミ所満載な愚作。

ストーリーからディティール、何処を取ってもツッコミ所が満載であまりに物語に没入できないもんだから終始イライラしながら観た。

まず、作品の中で出てくる架空の法律「パージ法」の設定からしておかしい。パージ法とは、犯罪率低下を目的に1年間に12時間だけ殺人を含む全ての犯罪行為が合法化するというもの。しかし、1年に1日ガス抜きデー設けたところで、犯罪率が低下するのか。また、自衛ができない貧困層が真っ先に殺されるから、失業率が低下して経済が良くなっているらしいが、それって労働者が減少するから、結局のところ自分たちの首絞めてるのと同じじゃねぇ。それにすべての犯罪が貧困によって起こるものなのかい。一事が万事、「アレ?」って部分の連続で作品に入り込む余地を与えてくれない。

じゃあ百歩譲って、そういう法律でそういう効果が出ていることにしておこう。けど、ストーリー部分の方がもっと飲み込みづらかった。イーサン・ホーク演じる主人公の職業がパージ用の防犯システムを売るトップセールスマンで、家も設備もばっちりと思ったら、襲撃者たちにいとも簡単に電源を落とされ、窓なんか銃1発で割れる。イーサン・ホーク、よくこんな藁の家同然なモノ売っててトップセールスマンになれたもんだね。挙句の果てにイーサ・ホークが「侵入不可能なんてもんは、この世にないんだよ」という言い訳じみたこと言いだすのでより呆れ。匿った黒人を渡さないと殺すと言われて、引き渡そうとしたらコロッと考えを変え「家族で戦おう」となるので、僕の気分は「もうお前ら、勝手にしろよ」という感じ。

それ以上に腹が立つのは、イーサンホークの倅。こいつが変な正義感から狂った集団に追われている黒人ホームレスを助けたからあんな惨劇が起きたんだよね。ホームレスが「殺人鬼だったらどうするの?」とか「まず親に相談しなよ」とイラッときてしまった。

中盤までかくれんぼみたいな事が展開するが、電源切られて真っ暗すぎなので、位置関係がよくわからないから、サスペンスや緊張感が全く醸成されていない。残り20分位になってやっと襲撃者たちが家に侵入してきて、そこからは一軒家プロレスのような戦闘になる。でもさぁ、エンジン吹かすの遅すぎでしょ。また、「ダメだ!殺される」って瞬間に襲撃者が背後から撃ち殺されるという場面、アクション映画とかでよく観る光景ですよね。これ、劇中で2、3回くらい繰り返します。鈍重この上ないとはこのこと。

ラストに関しては噴飯もの。「汝の隣人を愛せよ」→「悪うござんした」みたいな悪ガキへの説教みたいな終わり方で満足できるはずないだろ。別に映画の中で「人殺しはいけない、平和なろう」というのを訴えるのは構わない。僕だって人殺しは嫌だし、世の中平和になってほしいと思う。でも、映画の中でくらい、自分たちのエゴのために罪もない人たちを搾取する金持ちのクソどもがぶっ殺される瞬間を観てスカッとしたいでしょ。現実の世界は、善人は早死にして悪い奴らは今ものうのうと生きていて、映画みたいに上手くいかないんだからさ。ホント、ラストで百姓一揆的なカタルシスがあったらこの映画に対する評価も変わっただろうなぁ。

それとパージってさ、早い話が1年に1度自分たちの野獣性を解き放つ、いわば「祭りだぜ、イーハー」みたいなになる日でしょ。本作の襲撃者たちは、マスク被って狂った風だけど服装がオシャレというか小奇麗だから、お祭り感や血沸き肉躍るものが伝わってこない。メインの舞台が高級住宅街の中だけだから、他の場所ではどんなことが起きているのか全く分からないというのもマイナス。

良いところがあるとすれば、襲撃者グループのリーダーを演じてたリース・ウェイクフィールドくらいだろう。あのヤングエグゼクティブ的なナルシズムと「自分の信じることが1番正しい」というアメリカらしい狂気による気持ち悪さが出ていて良かった。

尺85分だけど、観た時間が本当に勿体ない。こんなクソつまらん映画観るくらいなら、先日Amazonから届いた『要塞警察』と『真夜中の処刑ゲーム』観た方がよっぽど有意義だ……って言いたいところだが、続編の『アナーキー』が先ほどまで挙げた欠点をほとんど解消する大傑作だったので、続編を作るうえでの礎になったのなら、★2くらいで充分かな。
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