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クレヨンしんちゃん ガチンコ!逆襲のロボとーちゃんのYAEPINのレビュー・感想・評価

3.3
難しいテーマ…
『クレヨンしんちゃん』シリーズで「女性専用車両」や「レディースデー」を巡って地獄のデモが繰り広げられるのに、開いた口が塞がらなかった。

「父親らしさ」、果てはここ10年以上、世界的に見直しが進められている性役割規範に関する議論が、コメディたっぷりに軽やかに詰め込まれているのが素晴らしいバランス感だと思う。

ただ、事の騒動に繋がった根本的な問題については、結局解消されていないように感じた。
本作で描かれる社会では、父親は家族との繋がりが薄く家庭に居場所がない一方で、母親は家事育児を一任されている。
公園にはおじさんがたむろし、幼稚園の遠足の付き添いには母親の姿しか見えない。

なぜ今回の悪役が否定されるべきなのか、家族はどうあればよいのか、という点にはそこまで踏み込まれていなかった気がする。
よって恐らく事態が集結したあとも、似たような風景は続いていくだろう。

また、なぜロボとーちゃんではなく、生身のとーちゃんでなければならないのか、という点もよく分からなかった。
本作において、ロボットの不完全性や脆弱性は、しんちゃんたちが見学に行く建設現場で描かれる。
ロボットには感性や柔軟性、独立した判断力がない、ということがそのシークエンスで示されていたと思うが、ロボとーちゃんには人間的な自我や人格が備わっている。
むしろ不自由な肉体から解放され、物理的な処理能力が高いロボットの身体はあって損はないので、生身の人間とーちゃんの上位互換のように見えた。
ロボとーちゃんが生身ひろしよりも、若干思考が固くて無機質、とかであれば分かるが…
私がみさえだったらロボとーちゃんの方に惚れてしまいそうだ。

とはいえあのみさえの表情で締める終わり方は、グサッと心に突き刺さる。
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