暴力と破滅の運び手

METライブビューイング/ボロディン《イーゴリ公》の暴力と破滅の運び手のレビュー・感想・評価

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劇中映像はもうちょっと作りようがあったろう、と思うのだけど、それ以外は満足。
舞台を近代に移し、ポーロヴェツでの歓待や息子の恋は全て幻覚(ここのキッチュなケシ畑での「韃靼人の踊り」、ちょっとすごいよ)として処理する大胆な処理もさることながら、2幕のガーリチ公の手下たちのどうしようもない男所帯っぷりが凄くよくできている。つまり占領と現地民への性暴力についての挿話なのである。3幕の荒廃ぶりもよくできていて、瓦礫の山を片付けるような地道な復興で落ちるラストが素晴らしい。

イルダール・アブドラザコフがとてもよかった。ケシ畑でぐるぐる回ってる顔がめっちゃ嬉しそうで…。ガーリチ公役のミハイル・ペトレンコも生き生きと悪役をやっていた。
ただ音楽的に繰り返しが多くて飽きてしまうのがネックだね。文句無しに綺麗なんだけどね、ボロディンって。