OASIS

プリズナーズのOASISのレビュー・感想・評価

プリズナーズ(2013年製作の映画)
4.0
愛する娘を誘拐された父親が、自ら犯人に裁きを下すべく立ち上がるという話。
監督は「灼熱の魂」のドゥニ・ヴィルヌーヴ。

「セブン」を超える衝撃!という謳い文句に違わぬ面白さ。
鑑賞前は娘の為に犯人を自分の手でボッコボコにする「悪魔をみた」の様な話かと想像していたが、とんでもない。
「迷宮」に迷い込むがごとく全く着地点が見つからないまま事態は二転三転し、やがて真実に辿り着くという上質なミステリーであった。
刑事の名前が知略に富んだロキにちなんで付けられていたり、キリスト教やフリーメイソン、神話的な暗喩がそこかしこに散りばめられている当たりは「セブン」とも共通する部分といえる。
「ゾディアック」「殺人の追憶」等も想起。

2時間半以上という上映時間だったが、脚本や演出、緊張感の保ち方等どれをとっても無駄が無い。
ほとんどのシーンに見逃せない要素があり、それが収束していく快感がとても心地いい。
冒頭から幾度と無く繰り返される「常に備えよ」すらピタリとハマるラストは「灼熱の魂」の衝撃には及ぼないものの実に鮮やか。
終盤のナイトロケーションでのドライブは目を見張る美しさだし、街を覆い尽くす雨も印象的だった。
刑事と父親、二人が一つの真相を追っているのだが、それがギリギリのラインで交わるか交わらないかというジリジリとした鬩ぎ合いが良い緊張感に繋がっていたと思う。

ヒュー・ジャックマンとジェイク・ジレンホール両者の対称的な演技も去る事ながらポール・ダノのヌメッとした気持ち悪さもたまらない。
個人的には第二の容疑者「蛇男」の圧倒的な容姿にゾワゾワした。文字通り蛇の様な爬虫類的な気持ち悪さには心底嫌悪感を抱いた。

非常に良く出来ているのだけど一応粗もあるにはある。
引っ張るだけ引っ張っておいて真相への辿り着き方が雑だとか。
しかしそんな事は気にならない程満足感はある。
あくまで、父親が娘の為に行った行為を自分が一人の親としてどこまで許せるか、自分ならどうするかという所に本題があるわけなので。

タイトルが「プリズナーズ」という複数形になっているのも実に意味深くて、やはりそれも鑑賞後に納得させられる部分である。
誰が「囚われ人」なのか是非確かめてみて下さい。

@イオンシネマ茨木
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