こたつむり

徳川いれずみ師 責め地獄のこたつむりのレビュー・感想・評価

徳川いれずみ師 責め地獄(1969年製作の映画)
4.2
♪ 血を流すあなたよ この胸に注いでくれ
  薔薇色に染まる程に
  このまま赤くひとつに

いやぁ。タイトルでドン引きですよね。
でも、違うんです。聞いてください。脚本家の桂千穂さんが「邦画の中で最も面白い」と語っていたから観ただけなんです。僕に“この手の趣味”はないんです。

それに刺青文化も苦手な分野。
なので、距離を置いていたのですが…本作に限って言えば。アバンギャルドな発想(自身に刻むのは首を捻りますが)に目は釘づけ。お腹に赤ん坊を刻むなんて…どんな発想でしょうか。

ゆえに脚本も破天荒、というか支離滅裂。
磔の刑とか鋸挽きの刑とか残虐なオープニングから始まり、貞操帯を着けて墓を掘り返す女性が主人公と思わせながら、何故だか刺青勝負が始まり、しかも悪代官の顔は真っ白けで長崎はアヘン街。

そして、飽きる前に飛び込んでくる裸体。
ぷるんぷるんでたわんたわんで眼福の極み…と思いきや、何故か混じっている男性。女装して胸毛をアピールする姿はギャグか狂っているのか…って由利徹さんじゃないスか。何してんスか。

仕上げたのは『恐怖奇形人間』の石井輝男監督。相も変わらず、イカレテおりますね(褒め言葉)。しかも、その“飛び道具”のお蔭で面白いのだから凄いです。

それに、主演の吉田輝雄さんも凄いんです。
失礼を承知で言うならば、もっとメジャーな作品に出演していたらブレイクしたのではないか、と思うほどの色気が漂っていました。

それが本作の持つ狂気とマッチング。
存在意義とか情念とか怨念とか色々なものが渾然一体となり、鳩尾の辺りが重くなるほどの満腹感に変わって、残るは胃の奥の腸から催す吐き気。ぐえええええええええええ。

まあ、そんなわけで。
エロでグロで猟奇的で現代には馴染まない価値観で撮られた問題作ゆえに、18歳未満お断りどころではなく、良識で足元が固まっている人には禁忌の作品。

ただ、桂千穂さんが仰るように。
“本当に面白い映画”を探しているならば必見だと思います。勿論、鑑賞は自己責任が原則。僕への苦情は受け付けません。あしからず。
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