OASIS

8月の家族たちのOASISのレビュー・感想・評価

8月の家族たち(2013年製作の映画)
3.0
父の突然の失踪をきっかけに数年ぶりに集まった家族たちが、お互いの本音をぶつけ合う内に徐々に隠し事が明らかになっていくという話。

ロマン・ポランスキー監督の「おとなのけんか」のような密室コメディかと思っていたら、予想外にヘビィな話の連続で困惑。

抗えない「血縁」という呪縛によって雁字搦めにされてしまう娘たちが、母親という最強最悪な存在によって家族の中での立ち位置を更に揺さぶられてしまう。
それ程偉大な存在である母親を演じたメリル・ストリープは、主役だけあってほぼ彼女の一人舞台となっており、映画内のキャラクターは彼女によって全て支配されていた。
なので、ジュリア・ロバーツやユアン・マクレガー、ベネディクト・カンバーバッチといった錚々たるメンバーであっても圧倒的な存在感が爆発する彼女の前には霞んでしまって、各キャラクター達の魅力もそれ程発揮できていないように思いました。
せっかくだだっ広い一軒家という設定なのだから、もっと屋敷内の部屋を有効に使えば良いのに、屋敷の外での展開や場面転換が多くなかなか家族が一画面に集まってくれない印象でした。

その反面、家族が一堂に会する食事シーンでは、大事なお祈りの時に仕事の電話が鳴って気まずくなったり、我慢が限界を超えて取っ組み合いになったりと、クスッと笑えるシーンがあり楽しかったです。
ただ、基本的に会話劇なので特に大きな動きも無く、豪華キャストの演技を楽しむ以外ではそれほど盛り上がらない話ではありました。
BGMも無く無音で会話が続く場面も多かったのもその要因で、テンポの良いBGMにのせて食事会での会話をきっかけにそこから枝葉が広がっていく、というようなコメディ方向に振り切って「かぞくのけんか」的な話に持っていっても良かったのではとも思いました。
自分は、アビゲイル・ブレスリンが良い具合に女性らしく成長していて、ちょっと危ない目に合ってしまうというシーンだけでも観た甲斐があったとは思いましたが。
後、ベネさんの歌声が意外と美声なので彼のファンは観ても損は無いと思います。

家族内の関係が全て崩れてしまってもジュリア・ロバーツだけはなんだか清々しく呪縛から解き放たれたような顔で笑っていましたが、あれだけ崩壊してしまった後ではもう家族が8月の真夏日に集まる事は二度と無いだろうな、と寂しくなるお話でした。

@大阪ステーションシネマ
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