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シネマ歌舞伎 野田版 研辰の討たれのBellissimaのレビュー・感想・評価

4.0
シネマ歌舞伎『野田版 研辰の討たれ』@東劇

赤穂浪士討ち入り後、熱狂の中ニュースを一人馬鹿にする人物がいた。研ぎ屋あがりの守山辰次。舌先三寸の男である。潔い死を望まない武士もいる筈だと主張する辰次を家老が叱咤、足蹴にする。家老に大掛かりな仕返しを企て恥をかかせようとするが・・・

「仇討ち」に代表される武士の論理、後先考えず目先の行動によって招く悲劇、強大な力によって圧しつぶされそうになる恐怖。木村錦花原作歌舞伎を野田秀樹の痛烈な批評眼を含みつつ軽快なコメディとして仕上げています。舞台狭しと生き生きと楽しそうに動き回る勘三郎さんが痛快!(涙)

自分を悲劇のヒーローに仕立て上げる辰次。本人の意図を超えて一人歩きする虚像。簡単に扇動されてしまう群衆。ここに野田らしいメッセージ性が強く出ていて メディアの影響を受け易く移り気な群集心理の恐ろしさこれを愚かと誰が断罪できるでしょうか。ビターな幕引きも◎。

勘三郎さんと野田さんの身体性のオーバーラップが驚き。武家の姉娘およし- 福助が移り気な適齢期の女性を可愛く演じていていい。ただ内輪ネタやお笑いネタは賞味期限が切れてしまっている点だけは致し方ないかな。サービス精神溢れる勘三郎さんの遊び心と受け止めています。

歌舞伎はこうあらねばならない、と硬直してしまった脳をもった人間から「もっと歌舞伎を勉強しなさい」と言われたら、謙虚にその言葉は受けとめる。けれども、同時にこちらも「もっと面白さを勉強しなさい」と「がりがらせる心」が思わず言い返してしまうだろう。(「研辰の討たれ」野田秀樹 )

「歌舞伎役者が演じればそれは歌舞伎です」八代目 幸四郎
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