OASIS

プロミスト・ランドのOASISのレビュー・感想・評価

プロミスト・ランド(2012年製作の映画)
3.9
次世代エネルギーとして注目を浴びるガス資源の採掘のため、田舎町を訪れた男が現地の人々と交流し人生を見つめ直すようになるという話。

主演マット・デイモン、監督ガス・ヴァン・サントという「グッド・ウィル・ハンティング」のコンビが再びタッグを組んだ映画。
地味な題材ながら、脚本と演出、俳優陣の演技でここまで良質な物になるかと感心する一本だった。

自分の仕事にやりがいや誇りを持つ主人公が、地域住民や環境保護団体の青年との対立の中でその信念を揺るがされる様が丁寧に描かれているし、マット・デイモンの白髪混じりの頭髪やシワの増えた顔が、仕事に一直線な男という役に深みを持たせている。

特に青年が登場した辺りからは、ただでさえ地域住民と揉めている中に更なる対立構造が生まれて、静かながらも確実に水面下で動き始める登場人物達のドラマに一層拍車が掛かりそれこそ地下ガスの様に面白みが溢れ出てくる。
青年の意外な正体や目的が明かされるタイミングも絶妙な上、彼が単なる主人公のライバルとして存在しているのではなく再起への重要な鍵となっている点には大いに驚かされた。

小学校教師の女性との間に生まれる小さなロマンスや同僚とのやりとりが清涼剤となっているし、フランシス・マクドーマンドの気丈な母親やローズマリー・デウィットのお茶目な美しさは堪らない。
彼女との「狂気の沙汰」ごっこは是非ご一緒したい。

新たな資源が見つかり今あるものが取って代わられる危険が出てくると、当然それに反発する人々がやれ安全性がどうだとかやれ莫大な費用がどうだとかを口を揃えて言い出す。
文句を垂れる前に具体的な代替案を出せよといつも思うものの、それが出来れば苦労はしない。
ようは今の生活を崩されてしまい路頭に迷うのが怖いので立場の強い人物の意見に賛同する事で自分も議論に参加している気になっているんだろう。
これは何もアメリカだけに限った問題ではなく、全世界の資源エネルギー問題に共通する病理的なものであり、この作品ではそういう部分も丁寧に描きつつ問題提起しているように思う。

難しい問題を扱いつつも主人公の葛藤を中心に描く事でヒューマンドラマとして非常に見応えのあるものになっているし、脚本や演出、ソフトフォーカス気味のカメラや空撮、ダニー・エルフマンの音楽などが一級品にまで高めている。
そして当然、それらを総括するガス・ヴァン・サントの腕前はやはり只者ではないと思い知る事ができる素晴らしい映画だった。

@シネマート心斎橋
OASIS

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