九月

フランシス・ハの九月のレビュー・感想・評価

フランシス・ハ(2012年製作の映画)
4.2
どことなく不器用で、いつだって全力投球のフランシス。傍から見れば、もう少しの器用さがあればもっとうまく生きられそうなのに、と初めは思ってしまった。
でもあの姿こそがフランシス(・ハ!)で、それが彼女の魅力で、そもそもうまい生き方って何?と思えてくる。
全編を通して、ほとんど休みなくずっと喋るか動くかしているフランシスを追って、気が付けば彼女のことを好きになり、元気をもらった。

明るくて、行動力があって、天真爛漫なフランシスは、自分と通ずる部分はあまり多くはなかったものの、27歳の等身大の姿にたくさん共感した。
ここ最近、ニューヨークが舞台の映画を観ることが多いので、住むところに困ったり、どこに住むにしても他人を頼ったりルームシェアしたりせざるを得ないところにも頷きまくった。でもああやって、親友と一緒に暮らしたり、空きが出たからと知り合ったばかりの人たちの部屋に転がり込んだり…あの身軽さ、気軽さ、そして適応力の高さ、とても憧れる。

個人的に、東京で暮らすひとりの友人に想いを馳せたりなんかもした。私より年下の彼女は、どこかフランシスと似ているところがあって、たくましくて可愛くてかっこいい(のに、何だか自虐的な一面もあって、自身が遭遇した面白エピソードをたくさん持っている)。毎年会っていたのに、コロナ禍になってからは一度も会えていないなぁ…と恋しくなった。思えば私は昔から彼女に憧れていた気がする。

白黒の映像は、どこを切り取ってもワクワクするようなシーンの連続だった。
休みの日に、家で何か観たいけど観たい映画が決まらない、なんていう時はアダム・ドライバーの出演作を鑑賞しがちなのだけれど、彼が出ている映画は今のところ100パーセントの確率で(好きか嫌いかでいうと)好き。ここ最近嫌な役を演じているのを目にすることが多かったけど、本作のアダム・ドライバーの役は、とても良かった。映画の中で笑っているところを久しぶりに見たような。レヴがフランシスに駅までの道順の説明をしているシーン、その説明の仕方が何故かたまらなく好きだった。

そして何といっても、ラストシーンの愛おしさ。タイトルの意味を知り、それでこそフランシス(・ハ!)と、どこかの道で全力疾走する彼女とすれ違いたくなる。
九月

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