もっちゃん

リトル・フォレスト 冬・春のもっちゃんのレビュー・感想・評価

4.5
小森の冬と春。前篇から約半年。待ちに待った後編の公開。期待以上の出来に心が和むどころか感動と人生のテーマを提示されたようで大事な何かをこの作品から受け取った気がする。

秋・夏編同様、後篇も料理を通して四季のサイクルを感じさせてくれる。

冬。小森の冬は厳しい。過酷な自然の中、雪かきに追われ春から備えた食糧を切り崩しながら生活する。しかし、そんな冬にしか食べられない物もある。納豆もち、石焼き芋、ふきのとう、などなど冬限定の旬な料理が続々と並ぶ。「寒さは最高のスパイス」とはよく言ったものである。納豆も大豆から作るとは驚きである。
さらに前編で明かされなかったいち子(橋本愛)の過去と小森に帰ってきた経緯が徐々にわかってくる。煮え切らない思い、迷いといった心情が皮肉にも小森の美しい銀世界や曇天とリンクしていて面白い。

春。冬に眠っていた生命が一気に目覚める。ごはんもしかり。新じゃが芋、春キャベツ、つくし、などなど冬の間に寝かせて育った食物がどれも美味しそう。また元気に自転車で駆け回るいち子ちゃんを見ることができる。
そして春は別れの季節でもあり、いち子は小森を旅立つことを決心する。それが今作の大きなテーマでもある。

「この世界は円ではなく、螺旋になっている」母から届いた手紙のこの言葉が最高に響いた。螺旋になっているから少しずつだが上に行ける。小森の人たちは同じことを繰り返すスローライフの中でも着実に新しい何かを見つけ、上へと向かっている。都会暮らしから逃げてきたいち子はそんな彼らと自分の覚悟の違いを思い知らされたのである。
そしてこの言葉は今作とともに小森の四季を見守った人の心に深く染み込み、説得力を帯びる。ラストの神楽のシーンでは感動と涙が抑えられなかった。本当に素晴らしい作品でいろんな人に見てもらいたい。