あの赤いコートの女性との恋の映画かと、思っていたのだが…
一冊の本を巡る過去への旅。
何も考えずに列車に飛び乗った理由がちょっと弱い気がする。あの小説を深く読んだのはその後だから。(でも、あの赤いコートの女性は確かに気になるし、たった一文でも心に沁みたのか。)
一人暮らしであろう自分の生活に疲れていたのは、冒頭のティーパックの場面で若干わかるが、もう少し欲しかった。
多分、後の自分で言うところの[退屈な自分]から抜け出したかった。その、キッカケを与えてくれたのが、あの女性とリスボン行きの切符と本だったってことだと思う。
あの野暮ったい眼鏡のせいか、いつものジェレミー・アイアンズより老けて見えて、いかにも、生活に疲れた感じだった。それが、軽い眼鏡に変え、本について調べていくうちに、だんだんとイキイキしてくる。
本の著者の考えに憧れ、その周りの人達に興味を持つ。その、本の人物達を訪ねて行くのが、ちょっとミステリーぽくて、面白い。その、当時の話が平行して描かれる。
ポルトガルに独裁政権があったことさえ知らなかった。レジスタンスの人達と著者の恋愛の行方がサスペンスぽくて、過去の話は面白かった。
でも、眼鏡屋の女性がたまたま、本の中の登場人物の知り合いっていうのがちょっと…だって、すごい重要人物。
そして、彼と彼女の別れが何故って思ってしまって…
全体的に音楽も情景もしっとり、美しかった。キャストも渋くて、好み。