emily

紙の月のemilyのレビュー・感想・評価

紙の月(2014年製作の映画)
3.4
銀行で働く平凡な主婦梅澤梨花は、気配りやまじめな仕事ぶりで、徐々に上司にも信頼を置かれるようになっていた。家庭では、夫はいるけど、自分に全く興味を持ってもらえず、銀行で必要とされることに喜びを感じていた。そんな頃、顧客の孫で大学生の光太と出会い不倫関係に。彼に必要とされるたび、顧客のお金に手を付けていく。

バブルがはじけて間もない1994年。梨花は徐々にお金に手を付けていくが、その過程が非常にリアリティがあって、ほんの少しだけが、時が流れてすごいことになってたという感じ。
自分の中の善悪を女子銀行員が代弁している感じで、展開されているのが面白い。どっちにも感情移入できるので、まるで梨花の行動が正当化されてくように感じる。
大学生光太との関係も年齢の離れた不倫関係となると、どうしてもお金目当て?という固定観念をもってしまいがちだが、はじめはそうではなかった。

始めは純粋な年上の憧れだったのかもしれない。ただ逆に梨花によって、お金でのつながりに転落していく描写が非常に面白い。

ただ誰かに必要とされたかった。心情の見えない無表情の冷たい目で淡々と横領が大きくなっていくが、梨花自身に罪の意識はない。だから観客も気が付いたら感情移入してしまうし、何故か逃げ切ってほしいとさえ思ってしまう。

いつか終わる夢物語なら、やりたいことをやる。
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