・「DEPTHS」は他人の深さであり、自分の深さでもある。
・リュウの存在感が、後半にかけ明らかに深くなっていくように感じた。
カメラを向けることが、眼差しを注ぐことが、リュウの(人間の)深さを露呈させることになり、結果的にリュウの存在を深めていく。
・真正面からリュウをとらえたカットには、小津安二郎監督の「東京物語」のラストカットからの影響を強く感じた。
あそこに映った奇跡ともいうべき嘘のない人間の反応(その深さ)。
それを、どうすれば再現できるのかということは、濱口監督が最新作の「ドライブ・マイ・カー」まで追っているテーマなのだと感じた。
(そして、ドライブ・マイ・カーで達成されたように思う)
・人の深さを見つめることで、自分の深さにも向き合うことになる。
ストレートである自分の中にも、同性愛的な部分はあるのだろうか?
その深さまで自分を見つめていないだけではないのだろうか?
・PASSIONのラストが、肉体まで含めた自分の深さに反応できたラストだとしたら、
THE DEPTHSのラストは、自分の深さに向き合いきれず、肉体を裏切ったラストだった。
ゆえに、シャッターは間に合わず、二人が再開することはない。
彼はチャンスを逃したのだ。