むさじー

薄氷の殺人のむさじーのネタバレレビュー・内容・結末

薄氷の殺人(2014年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

<現代中国の闇に咲く魔性の花をめぐるアート系サスペンス>

独創的なカメラワークと鮮烈な色彩でアート系の印象が強い監督だが、ジャ・ジャンク―と同様、現代中国が抱える様々な問題を提起している
点において社会派ともいえ、新しい表現世界が見える。
原題の日本語訳は「白昼の花火」。
そんな華やかさの隣は闇、一握りの富裕層と多くの貧しい人たちの暮らしが容赦なく描かれていて、犯罪の根底にあるのもその格差であることを示している。
強烈な印象のダンスシーン、男女の調和のとれたダンスの横で、自暴自棄ともとれる奇妙なダンスを踊る男は、もはや「まともに生きる」ことを放棄し、逮捕覚悟の打ち上げ花火はウーへの愛情表現だけでなく、警察組織へのアンチテーゼでもあったのだろう。
正直、サスペンスとしては突っ込み所が多々あるが、繊細な映像表現(足跡で尾行を表すとか)と、説明的なセリフや音楽を極力無くしたことで、この世界にハマる人は多いと思う。
グイ・ルンメイは明るく爽やかな「海洋天堂」の頃と違って、終始暗く、セリフも極端に少なかったが、際立った美しさでファム・ファタール(魔性の女)を演じ切った。
むさじー

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