Mikiyoshi1986

ゼロの未来のMikiyoshi1986のレビュー・感想・評価

ゼロの未来(2013年製作の映画)
3.7
明日11月22日で77歳のお誕生日を迎えるテリー・ギリアム監督!
おめでとうございます。

そして彼の最新作『ゼロの未来』は今回初観賞!
劇場公開時はあまり良い評判を聞かなかったので結局スルーしちゃいましたが、
やはりギリアムが展開する近未来像は素晴らしかったです。

ビッグバンによって"無"からすべてが誕生し、そしていずれはブラックホールに飲まれ再び"無"へと帰結するであろう未来。
では我々が神という観念的な慰みすらも失った時、現実社会における"人生の意味"とは一体何なのか…?!

スキンヘッドのクリストフ・ヴァルツが演じる奇人エンジニア、コーエン・レスは心にそんな虚無を抱きながら、
"無"を100%証明するという無謀に近い迷宮プロジェクト「ゼロの定理」の解析を任されることに。

本作は同監督の傑作『未来世紀ブラジル』で見られた監視・統制社会の揶揄にも通ずる一方、
まるで『ブレードランナー』に登場するエンジニア役J.K.セバスチャンの視点から発展したシナリオのようにも感じられます。

老朽化したアールデコ調の空間に一人で住む設定、その能力を大企業に買われる年齢不詳の孤独な技術者、劣等感を持ちながらもまんまとハニートラップに引っ掛かるピュアさ。
また近未来の情景は『ブレードランナー』の昼間&晴天ver.を思わせる雑多カオスなストリートが広がり、
コーエンが腰掛けながらバスを待つ姿は、自然とデッカードが屋台の順番を待つ姿を連想させます。

Radioheadのカバー曲「Creep」がこれまたコーエン自身を形容してて良かったし、ベインズリーはクソ抱きたくなる女だし、ラストも最後の最後までしっかりギリアム節。
外界との接触でコーエンの内に芽生え始めたものとは?
複雑そうなものほど、答えは至ってシンプルだったりするものです。

あとコーエンが着けてるブラジャーみたいなアイマスクは多分『12モンキーズ』の元ネタにもなった『ラ・ジュテ』のオマージュでしょうか。
(そんな『ラ・ジュテ』も来月Blu-ray出ます、嬉しい!)

そしてギリアムは予定通り来年、長らく頓挫していた『ドン・キホーテを殺した男』を無事公開させることができるのか!?
故ジャン・ロシュフォールを偲びながら震えて待ちたいと思います。
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