しゅんすけ

肉のしゅんすけのレビュー・感想・評価

(2013年製作の映画)
4.3
「肉」

 Filmarksでなかなかに評価の低い一作。なんですが、僕は結構好きな映画なんです。完全に「偏愛」です。他の人のレビューにもあるとおり、確かに、語り口は平坦だし、R18+というほどの残酷描写はないし、エロもグロも中途半端だし、何といっても、邦題がヒドいですよね。

 原題は「We are what we are」で、「私たちが私たちであること」という意味。なので、食人ホラーというよりは、自分のルーツと向き合う人間ドラマといったほうが正しいです。ホラーが苦手でも
、「何者」みたいな映画が好きな人は合うかもしれません。あと、毒親モノでもあるので、ドロドロした家族ものが好きな人にもオススメです。全体的な雰囲気は、「ぼくのエリ 200歳の少女」、縒ヨルゴス・ランティモス監督の「籠の中の乙女」に近いかと思います。

 話は、母を亡くした父が、美少女の娘2人に家族に代々伝わる伝統として若い女性を生け贄とするための殺人と人肉食を強要。思春期真っ盛りで抵抗する娘たちだったが、保安官による捜索が始まり、同時に大雨で埋めていた生け贄の人骨が流れだし、事情がおかしくなってくるという話。

 クライマックスの「お食事」シーンが大好きで、今まで薄口だったのに、いきなり原液を飲まされたような感じというか、すごく突き抜けたエンディングが素晴らしいです。そこから画の雰囲気と一見ミスマッチな「It was me that made her bad」(彼女をワルにしたのは僕だったんだ)というカントリー調の歌が流れるんですが、「彼女は間違ってない 俺のせいなんだ」って歌詞が作品全体のテーマを暗示していて、ちゃんと気が利いています。

 もともと原作があるんですが、監督のジム・ミックルは脚本、編集、VFXも担当しているということで、器用さとインディーズ魂が溢れてて、頼もしいです。(ちなみに、共同脚本のニック・ダミチさんは、保安官役で出演もしている) ジム・ミックル監督の新作SFサスペンス映画「月影の下で」(netflix映画)が気に入った人はぜひチェックして欲しい映画です。