しゅんすけ

哀れなるものたちのしゅんすけのレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
4.7
「哀れなるものたち」

「女王陛下のお気に入り」などのY・ランティモス監督作。
主演はエマ・ストーン。
共演にマーク・ラファロ、ウィレム・デフォーetc

 入水自殺を図ったところを救出され、奇怪な医者・ゴッドの手により、胎児の脳を移植され蘇生したベラ・バクスター。精神は子供、体は大人で、周囲をドン引きさせるような行動を連発するが、世界を知るうちに恐ろしい学習速度で自分自身を形成していくというお話。

 もうタイトルの出方からして変。

 Y・ランティモス監督の独特のセンスにのっけから引き込まれます。
ただ、「女王陛下のお気に入り」もそうだったけど、ただ奇怪なだけで終わらず、1本の映画として筋の通った、めちゃくちゃ面白い映画でした。

 R18なだけあって、ベラが××行為を覚えたり、マーク・ラファロ演じるダンカン(近年稀に見るクソ男)の快楽の対象にされる辺りはエロに全振りしちゃうだけの映画になっちゃうのでは???と思ったのですが、そんなことなくて、ベラは読書をし、他人との会話を楽しみ、貧富の差を知り、男性の浅はかな欲望を知ることで、どんどん成長をし、逞しくなっていくところが感動的でした。

 「バービー」と比較する評が多いですが、個人的には女性への応援歌というだけでなく、未知の世界に飛び込む人へのエールにも聞こえました。自分が今、全くもって未経験の職場に飛び込んで、いろいろ苦しみながらも勉強して毎日仕事をしている立場なので、あらゆることを吸収し、自我を形成し、成長していくベラの姿に元気をもらえました。

 あと、ラストはY・ランティモスらしいすごい意地悪な展開なのですが、とてもとてもとてもスカッとする終わり方なのもよかったです。リー・ワネル監督版「透明人間」(2020)とか、タランティーノの「デス・プルーフ」的な感じの、抑圧する男を完膚なきまでにやっつけるエンディングは是非とも必見です。

 エマ・ストーンは、ヌードも辞さない演技という以上に、こんな複雑な役どころを完璧に演じ、ファッションも最高にキマっているというとこで、アカデミー賞主演女優賞最有力なのは納得でした。

 カップルも何組かいたんですが、間違いなくデートムービーではないですね。ただ映画好き同士な友達と観たら、いろいろ語り合いたくなる1作だと思います。超おすすめです!!