Hally

アメリカン・スリープオーバーのHallyのレビュー・感想・評価

4.5
"十代の神話"

中学から高校に進学する、もしくは高校から大学へ。"あの"季節にしか味わえない心のざわめきがある。複数のパートが同じ時間軸を共有しあう。この構成がなんとも巧みだ。各パートで水と関わりのあるシーンが沢山登場する。プール、散水スプリンクラー、お風呂、雨、池、水たまり、ウォータースライダー。この多さには意味がある。それでいてこれに関連するシーン全てがめちゃくちゃ良い。

アメリカの青春モノは酒を飲み、タバコを吸い、恋をして、SEXをして。その中に必ず存在する大人への期待、恐怖、葛藤が描かれる。私はこれが大好物だ。自分と違いすぎて憧れすら抱いてしまう。しかし今作もよくある青春モノかと思いきや一味違う。"あの"季節を駆け上がってしまい後悔している男が登場する。その男がもらす"冒険を期待して大人へと急ぐ、後で気づいても二度と戻れないのに"の言葉。青春に対する後悔が滲むこの言葉はアメリカの青春モノではかなり異質な言葉ではなかろうか。そしてこの言葉が結果的に彼女を急がせることなく、自分のペースで彼と付き合う選択をさせる要因になる。女と彼のウォータースライダーのシーン、特に水飛沫の音だけが聞こえるあのシーンはめちゃくちゃ素敵。

男になりたい少年。スーパーで一目惚れをした金髪の女性を探し悶々とする。友達に嘘の自慢をして、ホラー映画のあるシーンをもう一度見たり、友達のお姉さんにうつつを抜かしかけ(あのビニールカーテンの残酷さ!)。それでも男は一目惚れした女性を探し見つけ出す。"やっと"のその瞬間に気づいた彼女の事実(?)。それに対する彼の選択の正しさに心震える。その後に友達のお姉さんのカーセックスの暗示を入れ込む監督の皮肉さとその意味。そして彼の選択は"冒険を期待して大人へと急ぐ、後で気づいても二度と戻れないのに"の言葉を引き立たせるのだ。

映画が本格的に好きになって、自分の好きなジャンルが海外の青春モノだと気づいた時にあるレビューを読んだ。その作品を見てみたいと思い、探したのですがDVD化もされておらず、何回か劇場で観れる機会があったのに逃してしまいました。それが本作。Netflixに追加されるというニュースを聞いた時は心からNetflixに入って良かったと思いました。ありがとう。期待以上の自分にとってド ストライクな作品だった。
Hally

Hally