Kuri

イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密のKuriのレビュー・感想・評価

3.9
サイモン シンの著作を数年前に読んで、エニグマについては基礎知識がある状態で。

実話ベースのお話なので、
主人公であるチューニングさんが自他共に認める世界一の天才であって、当然のように暗号解読マシーンを発明して、っていう"あらかじめ才能を持った人が才能を発揮するだけで解決する話"になっているかと思ってて気にはなりながらもなんとなく敬遠していたのです。

観てみると、ひとりの天才だけではなくチームとしての関係性を加えていて、そこにこそグッとくる作品になっていて。

今以上の男性社会の中に
主人公が才能を見初めて引き上げた女性の立ち振る舞いから、主人公自身の立ち振る舞いを改めるヒントを見つけるシーンとか。

最初はチーム内で反発され浮いていた主人公が、いざ首にされそうになった時に身を呈して庇う仲間のすがたとか。

結構どれもありがちな表現なんだけれども、主人公を演じるカンパーバッチの普通にしていても普通からはみ出してしまう存在感ゆえか、すっかり萌えてしまいました。やっぱり魅力的。

ナチスドイツが一番の敵であった30年代後半から終戦まで。
ソ連と共産主義の脅威を恐れた50年代からの冷戦時代。

自らの立ち位置は変わらずに生きているのに、時代の中で翻弄されていく天才数学者に対して、
かつての婚約者が過去自らに投げかけてくれた言葉を返すシーンに嗚咽してしまいました。

今の自分も、そして誰もが、(少なくとも一部は確実に)彼が作った世界の中で生きているのだ。
Kuri

Kuri