さく

仁義なき戦い 代理戦争のさくのレビュー・感想・評価

仁義なき戦い 代理戦争(1973年製作の映画)
5.0
シリーズ通してエンタメ要素的には最高峰の本作。武田明(小林旭)も登場していよいよ役者が揃いました。山守義雄(金子信雄)の畜生っぷりも本作において最高潮に達し、槙原政吉(田中邦衛)とのやり取りの可笑しさもここに極まれり。

ヤクザ映画というとやれ「暴力的だ」「反社会的」だと揶揄されがちかと思いますが、『仁義なき戦い』で描かれているものは、断じて「暴力礼賛」的なものではありません。戦争を描いた映画が「戦争賛美」とは限らないのと同様、暴力を描いたからと言って、暴力を肯定するような映画とは限りません。

戦後の日本、平和が訪れたかと思いきや、国内では引き続き「金」や「権力」を求めた闘争は絶えず、欲にまみれた上層部によって若者の尊い命が奪われます。現場に赴く若い兵隊が死に絶える戦争と構造は変わりません。任侠道に則って、仁義を通そうとする広能昌三(菅原文太)はどんどん厳しい状況に追い込まれます。打本昇(加藤武)のような「腐れ外道」がどんどん権力の中枢に上り詰めて行きます。

こうした構図は、戦争やヤクザの闘争に限らず、現代社会を生きる私達の周りにも、至る所に存在していると思います。あらゆる権力構造の中に、山守義雄のような「外道」がおり、いつだって犠牲になるのは希望に満ちた若者だったりするわけです。

そういう意味合いにおいて、『仁義なき戦い』は、ただの「暴力的なヤクザ映画」などと揶揄できるものではなく、普遍的な意味合いを持った、日本社会における神話的な作品なのです。
さく

さく