さく

BLUE GIANTのさくのレビュー・感想・評価

BLUE GIANT(2023年製作の映画)
3.5
『スラムダンク』が新時代のスポーツアニメ映画を魅せてくれたように、本作は音楽アニメの新しい世界観を示してくれそう…と途中まではそんな期待に胸を膨らませていたのですが…


ここから先はネタバレも含みます。
ちなみに原作は未読です。


いや、総じて楽しめましたし良かったんですよ。轟音上映で音も凄かったし、その点は大満足でした。玉田の成長譚としても良かった。

しかし、どうも自分の中で、「純粋に音楽を楽しみたい」という気持ちと「物語としての進行」が喧嘩をしてしまった感じがして、最後モヤモヤした感が残ってしまったのです。

これまでのこの手の映画やアニメって、いざ演奏のシーンとなるとカットされてしまったり、歌は「俳優さんとか声優さんなのに凄い!」みたいなレベルに留まっていたと思うんですが、本作はもっとガチなわけじゃないですか? こちらの方面の音楽知識に乏しいですが、上原ひろみさんくらいは私でも知っています。

それが故か、ストーリーが進むにつれて、私の中の気持ちが、音楽>>>物語になってきてしまったのです。だから最後は三人揃っての大団円ライブでパッーと盛り上がって気持ちよく終了! みたいな爽快感を期待していたのに、「あー、そうなっちゃうの…」と若干冷めてしまいました。

もちろん、これは音のない漫画(原作)であればそんなことはなく、物語の一つとして普通に読めたかもしれないし、そういう展開自体を否定する気もないですが、本作はちょっと「えー…(そういう展開なのね)」と残念に思ってしまった。ライブで気持ちよくさせてよ、と。

こういう気持ちになってしまった理由は他にもあって、主人公の宮本大が「ただの天才」としてしか描かれていないので(原作は違うのかもしれないけれど)、あまり物語の進行に感情が入っていきずらかったというのもあります。

脇を固める、玉田と雪祈(ゆきのり)は人間臭くて良いのだけれど、主役に魅力が感じられない…結果物語よりも音楽に期待してしまう…ああ、それなのにという感じです。

原作はこの後もストーリーが続くようなので、ここから先、大の挫折なり壁にぶつかるなりってのが描かれているのかもしれませんがね。
さく

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