もなみ

ゴッド・オブ・ウォー 導かれし勇者たちのもなみのネタバレレビュー・内容・結末

3.0

このレビューはネタバレを含みます

中世ヨーロッパ。
黒死病により大量の死者が出て、街中にはゴロゴロと死体が転がっている。
レッドメインは検疫で閉じ込められていたが、ようやく解放された。同郷の娘と意を通じている悩み多き若い修道士である。

時代は魔女狩りと称して薬草の知識のある者を焼き殺すという歪んだ宗教観に支配されており、その残虐性にレッドメインの信仰は揺らいでいる。

黒死病を神の怒りと捉えるもの、このようなひどいことを神がなさるわけがないとして、黒死病を悪魔の所業と考えるもの。いろいろな流言が飛び交い、科学の知識のない時代に宗教はまるで無力であった。

たまたま湿原の向こうにあるため人が来ず感染を免れている村があったが、そこを聖域と見るものもいれば、悪魔が支配しているからだと考えるものもいて、ショーン・ビーン率いる魔女狩りの部隊が遣わされることになる。その内実は残酷な殺しも楽しむような者も含まれる愚連隊のようなものであった。

レッドメインは同郷の娘に会いたさに、ショーン・ビーンの道案内をかってでる。純朴なので、このような機会を与えられたのは神の啓示だと思っていた。

ショーン・ビーンは冷静で、魔女狩りなどには賛成しない。
しかし、いったん村人から目をつけられ魔女のレッテルを貼られた女性は、一度その場で助けても、また後からなぶり殺されるだけだとして、容赦なく切って捨てる。

苦難の末たどり着いた待ち合わせの場には、馬だけが残され、娘の姿はない。
レッドメインは悲しみ、神の罰だと思うが、ショーン・ビーンが「神はそこまで暇ではない」と言い、因果応報を否定するあたり、なかなかの現実主義者のようであり、頼もしい。

が、しかし、ショーン・ビーンも妻子を失っており、魔女狩りの動機は、未だ感染していない村に妬みがあるのではと感じられる。

ようやく村にたどり着く。森で盗賊に襲われたと言って一晩の宿を頼み、村は平和で歓迎されるが、そこでは教会は打ち捨てられていた。

薬草の知識のある女が傷の手当てをしてくれたが、実はこの女は、黒死病は神の怒りであるから、修道士の血を流せば村は守られると村人を煽動して、村を支配していた。宗教者に夫を殺された過去があり、修道士には恨みがあったようだ。

村人達は宴の酒に薬を入れ、修道士達を眠り込ませて捕らえ、宗教を捨てることを要求する。

実はレッドメインの恋人は、森で倒れていたのを、この女が助けたのだが、薬草を使って、わざと生き返らせたようなパフォーマンスを行っていた。超自然的なパワーがあるかのように振る舞い、自分の地位を築くのに利用していた。

が、レッドメインは、恋人が死者として甦ったと勘違いし、娘が正気を失っている様子から、地獄に落ちたと考えて、刺し殺してしまう。

この隙を見て魔女狩りの一行は縄を解き、村人達と乱闘になり、レッドメインともう一人以外、ほぼ全員死んでしまう。
(ショーン・ビーンは棄教を迫られて拷問で八つ裂きにされた)

女は、少女は仮死状態であっただけで、殺したのはレッドメインだと告げて去った。

悲しみのあまり、レッドメインはその女を探して魔女狩りをするようになり、風の便りでは、全ての女が、自分の探す憎い女と重なって見え、罪のない別人に自白を強要して拷問をしたり、人違いで焼き殺したりしたらしい、との伝聞で、ジ・エンド。

宗教は無力。
無知も罪悪。

宗教的な信仰心も、科学的な知識も、全て己の権力の維持のために用いようとする人々。

魔女狩りは、宗教の大義名分においてなされるが、実は自分の残虐な欲求を満たしたいだけに他ならない。

薬草の知識のある、一見理性的な女も、修道士達を血祭りにあげれば、無知な村民達が喜んで自分に従うので、残虐行為を止めようとしない。

レッドメインも、残虐性から離れたところに身を置いていたつもりであったが、いざ、自分の恋人を誤って殺してしまったあとは、自分の罪を認められず、他者に責任を転嫁して、代償行為として残虐な魔女狩りを自ら行うようになってしまう。

人間の暗黒性に焦点を当てた作品。

邦題、めちゃくちゃすぎ。
普通にブラックデスで良かったのでは。
もなみ

もなみ