エマニュエル・ルベツキが映像を担当したここのところの映画は、レヴェナントにしろこれにしろ、この素晴らしい映像でどれだけアホなことができるか、と監督たちが競っているように見える。映像に映画が踊らされている。主客転倒っぽい。
映画は人生から逃避する夢、と揶揄気味に言われるが、この映画はほんとうに人生を生きていないような感じ。普通の映画で言えば、プロットとプロットのあいだの何も起こらない時間に観客を退屈させるのも悪いし、と免罪符のように挿入される断片的な「つなぎ」、それをひたすら2時間見せられるような映画。ここに時間は流れていない。楽しむか、拷問と取るか。
ここに出ているキャストは皆、他の役者に置き換えても何の問題もなく成立してしまうように思える。そこが問題なのだけど。
ストーリーを、無理と承知の上で要約するならば、割とどうしようもない男が割とどうでもいいモヤモヤの中をさまよう話。