SPNminaco

ジェニーの肖像のSPNminacoのレビュー・感想・評価

ジェニーの肖像(1947年製作の映画)
-
売れない画家(ジョセフ・コットン)と不思議な少女ジェニーの、時空を超えたメロドラマ。過去と現在に架かるマンハッタン・ブリッジ、独りぼっちの2人がすれ違う冬のセントラルパーク。現れるたび急いで成長するジェニーは何かを探していて、画家もまたミューズとなった彼女を捜し続ける。
ファンタジーなので部屋では窓からの光ではなく、肖像画が輝き、2人の顔を照らす。全てを知った画家が現代の現実世界からジェニーの側、黄泉の世界へ向かうと、モノクロの映画は突然パートカラーに。荒れ狂う海と灯台の螺旋階段、この世ではない超自然的なスペクタクルをダイナミックに表現した特撮が斬新。その後セピアカラーになった世界は、画家も過去の一部としてジェニーと共にあるからだろうか。
でも、実は画家を助けてるのはジェニーじゃない。懐深い画廊主、機転を利かせて仕事を取ってくれる友人、家賃を払えなくても住まわせてくれる大家、NYアイルランド系コミュニティ。むしろ、そんな現実の人々の情けこそが美しく大切なもの。画家はそれに気づかないままだ。特に世話を焼いても忘れられる友人は切ないよ。画商が言うように、画家は独りぼっちじゃなかった。
今は無きハマースタイン劇場、既に失われた美を描いた肖像画。カンバス生地を重ねた撮影が、儚い幻を物語る。この当時に失われたものはジェニーだけでなく、血の通った人の情けなのだと。それもまたファンタジーなのかもしれないと。本当はそんなテーマの映画にも思われた。
妄執的ロマンスは『ある日どこかで』の原型かな。どう見ても少女じゃないジェニー演じる、ジェニファー・ジョーンズの声が美しい。でも肝心の肖像画はあれで「名画」なのかしら…
SPNminaco

SPNminaco