曇天

ウォークラフトの曇天のレビュー・感想・評価

ウォークラフト(2016年製作の映画)
4.0
押入れにしまい込んだファンタジーRPGを20年ぶりに引っ張り出してきたかのような感覚。
剣と魔法の世界に住む人間・ドワーフ・エルフの連合軍が未知の軍勢の攻撃を受ける。獣のように大柄で岩のハンマーを振り回して突進してくる「オーク」は魔術の力で門を開いて人間の世界を征服しようと企む。

序盤で専門用語が唐突に出てきて戸惑うのはご愛嬌、ファンタジー世界に投げ出された感覚でむしろ心地よい。固有名詞は説明なしでも進行するにつれて理解できてくるレベル。意外とすいすい話が運んで世界観に関する大きい枠組みは最後まで説明されなかった。ほぼテンプレだから説明不要ではあるけど「独自の設定を知る楽しみ」が満たされないのは残念。続編やる気満々だったので持ち越し分に期待したい。

ボス敵がインフレする日本のファンタジーゲームに馴染んでいると、ザコ敵という認識に陥りがちなモンスターのオーク。こいつが最新のCGで動くという点にまず注目したい、担当は天下のILM。原作は海外で絶大な人気を誇るリアルタイムストラテジー、集団に命令を下して任務を遂行していく戦略シミュレーションゲームで画面は見下ろし型。プレイヤーはチマチマ動く騎士やオークの集団を見ていたのが、本作ではカメラがキャラの目線に降りてきてよりリアルに描画された映像世界を見ることになる。うん、この落差による没入感は半端ない。今回オークは最大の敵だからその存在が最大限不気味に描かれて、生活様式が物語上大事なフックになってくる。そして最後にはオークに感情移入させにかかる、カッコよすぎて涙腺ヤバイ…。あの絵に描いたようなおなじみのオーク造形のせいだろうか。しゃくれてて下キバ出てる、あの顔がなぜか落ち着くのよね。あとはハーフオークにポーラ・パットンとかいう最高の配役にサムズアップで賛辞を送りたい。

世界観よりも個別キャラクターに焦点を当てたつくり。ファンタジー映画よりも戦争映画の印象が強く残る。戦いに翻弄されながらその世界で生きてきたキャラ達の息遣いがちゃんと感じられた。原作つきの映画化の中では自由度が高かったはずだが、この配分は上手い。キャラの行く末が気になって次もまた観たくなる。もっと言えばあそこで終わらなかったのは長編化しがちなファンタジーの特性でもあるし、個々の思いのぶつ切り感は大河なドラマによくある手法とも言える。
アバターと比べられてますがあんなインディアン狩り映画よかよっぽど面白くてカッコかった。期待値は下がっていましたが最初に劇場で予告を観た時の高なりを期待して観に行って良かったです。

しかし向こうではオークはゲート(ポータル)から出てくるものと相場が決まってるのかな。以前STEAMでゲートから出て来るオークを倒すシューティングを遊んだことがあります。あの時の恐怖が蘇りました。
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