TAK44マグナム

バクマン。のTAK44マグナムのレビュー・感想・評価

バクマン。(2015年製作の映画)
5.0
俺たちの愛した少年ジャンプがそこにはあった!

いや、ぶっちゃけ、もう少年ジャンプを購読するのをやめてから五年ぐらいはたつのですが、それまでは小学生高学年の頃からずっと読み続けていた唯一の少年漫画誌がジャンプでした。
たぶん、30年ぐらいは読み続けていたんじゃないかな。
最近はたまに立ち読みするぐらいですが、それはこちらの年齢がジャンプの読者層から離れていってしまったのが原因なので、寧ろずっと「友情・努力・勝利」をテーマに作り続けている編集部や作家さん方は本当にすごいと思います。
特に作家さんは、こちらが数分で読んでしまうような原稿に、あれだけの時間をかけて、自分の持つすべてを吐き出しているのだなと思うと頭が下がるおもいです。
そして、その事実を、非常に明確かつ丁寧に描けている本作はカルチャーをテーマとした映画としても優れています。
現在、日本特有の文化といって良かった(日本式の)漫画は、クールジャパンなどと称されて世界各国で楽しまれるようになっていますよね。
きっと海外の漫画愛読者たちにも興味深く観てもらえる映画なのではないでしょうか。

「バクマン。」は原作漫画からして、かなりジャンプの漫画の中でも好きな方で、毎週楽しみにしていました。
そんな「バクマン。」が果たしてどんな風に実写化されたのか?
興味津々の状態で鑑賞してきましたが、予告編を観ての期待以上の完成度で、ガツン!とやられました!

なにより、何かに一生懸命になる素晴らしさをちゃんと描けているところが良かった。
自分があんな風に青春時代をおくれなかった・・・というか、ここまでの人生であれほど何かに一生懸命になれたことがあるのか?と自問自答しても「ない」としか答えられないので、本当に心底、主人公のサイコーとシュージンが羨ましかった。

余計な枝葉を拡げずに二人の話に絞って、登場人物も必要最小限しか出てこないのも間違いのない判断だと思いました。

製作発表時から懸念されていた「主人公コンビの配役が風貌的に逆なんじゃないのか?」という問題も、実際に観てみるとピッタリで、他の漫画家や編集者のキャスティングも絶妙でした。
サイコー役の佐藤健は驚くほどにサイコーというキャラクターになりきっていて、高校生役もなるべく違和感を感じさせないように演じているのが分かります。
喜怒哀楽の感情表現、そして目力の強さが半端なかったです。

エイジや平丸などのエキセントリックなキャラクターも、原作を知っていると、知らないより確実に楽しめるように巧く世界観に馴染んでいましたね。
平丸は、とにかくいちいち笑えて、新井浩文で大丈夫かと思っていましたが、それはまったくの杞憂でした。
染谷将太演じるエイジは、原作のエイジがあまりにも天才かつぶっ飛んだキャラなので比べると地味ですが、よりクールなんだけれど人間味を増した印象を受けました。
「悪役」を買ってでる場面が上手でしたね。

ビジュアル面でも、漫画対決という実写化にさいしてハードルが高そうな部分をプロジェクションマッピングやCGを使った斬新な表現方法で魅せてくれます。
しかも、まさしくジャンプ的なド派手アクションが入り、これぞバトル漫画といった遊びが嬉しいじゃありませんか。
ごちそうさま!としか言いようがありません。

そして、ジャンプ愛に満ち溢れたエンドロールで、不覚にも泣いてしまいましたよ。
ああ、人生の多くの時間を、こんなにも素晴らしい漫画を読んで過ごしていたんだな、と思い出してしまって・・・。
サカナクションの曲も高揚感があって、とてもマッチした、近年稀に見る最高のエンドロールでした。

少年ジャンプをまったく知らない層には響かないかもしれませんが、やはり一時期には600万部以上という出版物の最高記録をもつレコードホルダーな雑誌です。
数多いであろう現役読者、そして過去の読者でも必ずや何かを感じずにはいられないと思います。

情熱をかけるに値する何かを見つけたくなる、これぞ青春映画の傑作。


劇場にて