くら

ルック・オブ・サイレンスのくらのネタバレレビュー・内容・結末

ルック・オブ・サイレンス(2014年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

椅子に腰かけた生き証人が、インタビュアーに向かって思い出話をする。

こうした証言ドキュメンタリーは、誰にもなじみ深い。だが加害者が被害者に対して証言するというものは見たことがなかった。
とても意地の悪いものだと感じたが、当事者同士が向かい合うことで何が起こるかわからない緊張が漂っていた。
特に被害者側であると打ち明ける場面、
加害者に見える明らかな動揺は、このシチュエーションが設定されたからこそ生まれたものだった。
そこには非難をかわそうとするだけでなく、過去に犯した過ちを認めたくないという心情が見て取れた。

虐殺、武力鎮圧、紛争、戦争。
呼び名は違えど、結局はすべて殺人ないし殺人未遂であることに変わりはない。
だがその時々の勝者によって、殺人は正義となってしまう。
これはインドネシアだけの話ではなく、すべてのケースに当てはまる。“大義名分”が用意された戦争では、兵士は相手を何人殺したかが勲章となる。

自分を支えてくれる仲間、住む土地、明日を生きるための食糧は、果たして暴力でしか得られないものなのだろうか。
殺人を正当化する人々の言葉は、ひどく虚しく薄いものに感じられた。
くら

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