風ノ助

夏をゆく人々の風ノ助のレビュー・感想・評価

夏をゆく人々(2014年製作の映画)
4.5
イタリアの人里離れた湖畔沿いの村で昔ながらの養蜂を営み近代化に逆らった生活を送る一家のひと夏の出来事を描く

両親に愛され仕事も家のことも頼りにされている長女のジェルソミーナは家の経済状況や両親の関係性など少しずつ周りのことが見えてくる年頃になっている

無邪気な子どもの頃は好きという感情だけを持っていればよかった父親が実は経営に杜撰で資金繰りがたいへんであったり更生プログラムで14歳の少年を引き取ることを相談もなく勝手に決めていたりと不信感も出てきて先のことも不安になる

長女は賞金が出るテレビ番組に応募して家計を助けようと考える
もちろん今いる狭い世界を飛び出したいという気持ちもあったと思う

父親はお金では買えない大事なものがあると天然なのか純粋なのか一家を支える長としてはあまりにも頼りない
彼は頼りにしているジェルソミーナがいつか手元から離れていくのをとても恐れている

家族の形が変わりつつあることに不安を抱く父親とジェルソミーナの繊細な感情をセリフではなく養蜂のエピソードに重ね合わせて表情や態度で表現していてこちらも心が痛くなるくらい伝わってきた

陽光きらめくトスカーナの自然の中
湖水で遊ぶ小さな妹たち
養蜂作業、蜂の羽音、口笛
洞窟の壁に映る影
ちょっと泣きたくなるくらい素敵な場面描写がいっぱいでした

戻ってきたら場所はある
家の中に何か秘密を隠しておくべき
遠い将来誰かがそれを見つける
謎めいた不思議なセリフ

そして最後に映る廃墟のようになった住居
一家はどうなってしまったのか
隠していた秘密を私たちはこの映画の中で見つけられるのか

そもそもこれはいつの時代の話なんだろう

観終わってからも想像が膨らむ不思議な作品でした
風ノ助

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