"未来をわしづかめ! 過去はクソ"
映画をよく観る人なら今作の持つ違和感に気づく。これは窮屈さを生み出すと同時に感情を目一杯に観る者の心に溶かし込み、他の映画以上の没入感を引き出す。この違和感をコントロールしているのが音楽だ。グサヴィエ・ドラン監督の選曲センスとタイミングがとてつもない。
この映画の持つ窮屈さから解放されるシーンが2つある。１つはOasisのWonderwallをバックに主人公のスティーブが文字通り 観る者を解放する。"いつも"に戻っただけなのに初めて味合う新鮮さがある。またこのシーンがこの後の展開を引き立てる。もう１つは終盤に車で三人出かけるシーン。しかしこのシーンでは視覚的には解放されたはずが音楽がそうさせない。次第に視覚的にも…。映画の中でおそらく1番ハッピーなシーンであるはずなのに1番辛い。彼女が受け入れた現実を暗示させる。締め付けられた感覚は終わりまで解放されない。
この映画はラストを私達に委ねている。こんなに心で引っかかる映画は初めて。私が映画を見続け人生を送る限り何度も見返すと思う。その度に考える。でも一生この引っかかりは取れない気がする。
