オレンジマン

雪の轍のオレンジマンのレビュー・感想・評価

雪の轍(2014年製作の映画)
3.9
まず最初に「いや、ちょ、そんなのなしでしょ」って言いたくなる。どんな映画も2時間、3時間観客を魅了させるのに苦心し、ハッとするような見せ場を用意するだけに留まらず、CGを持ち出して想像の世界をぶんぶん振り回して足掻いているのに、この映画ときたらしれっと「3時間16分、ボーン」と突きつけた挙句、まったく飽きないし、観れてしまうという最悪で最高な罪を犯している。
まぁまずはとんでもない。

この作品は2014年のカンヌ国際映画祭のパルムドールだが、その前年受賞作品である「アデル、ブルーじは熱い色」にかなり似ている。
・緊迫した会話中心であること。
・長時間見せられることで、劇中の人物それぞれに観客が自己を投影するよう仕向けていること。
・扱っているのは日常的な感覚で(アデルは同性愛という意味では日常的ではないのかもしれないが、ああいう感情は異性愛などでも立ち現れるはず)、観終わった時観客は「何を観たのか?」と問われ、つい「人生」「人」と言いたくなる(他の方のレビューでも書かれているようにまったくその通りだと思う)。
最近のカンヌはこういう作品が好みらしい。
人生や人を描き出すのは、長らくヨーロッパ映画の十八番であったと思うが、つい最近ハリウッドがこれを別のやり方で表象した。それが「バードマン」ではないだろうか。ひたすらに内面的な描写で構成される人生と、ひたすらに視覚的な技術で構成される人生。この観点でみると、今の映画界面白い構図になっているように思える。
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