真田ピロシキ

南風の真田ピロシキのレビュー・感想・評価

南風(2014年製作の映画)
3.2
昨日の危険運転を誇る自転車乗りの恥さらし映画『プレミアムラッシュ』に腹が立ったので口直しに今日も自転車映画。日本人の雑誌編集者が台湾でモデルを夢見る現地の女子高生を渋々ガイドにして自転車取材を行うロードムービー。台湾の有名なスポットに着いては律儀にその地名を字幕で教えてくれて、その合間に他愛もないストーリーが展開される長尺の旅行CMみたいな映画。ストーリーとしてはファッション雑誌の編集者として先がなくなりかけてる藍子と無謀なモデルの夢を追いかけるトントンの凸凹コンビが旅で距離を縮めたり離れたりを繰り返しながら友情を築き上げ両者は最終的に成功を収めて行って、特に深くはないがCMの筋と思えば悪い気は全くせず気持ち良く映画を終えられる。ロードムービーとしての面白さは日本好きのトントンが独学なのか変な日本語だけ使えて意思疎通のぎこちなさがかえってこの旅の印象深さを強める。途中から同行するロードバイクイケメンのユウは実は父親が日本人で日本語が分かるのだが、分からない振りをしてて藍子は色んな意味で不確かな旅をする。このパッケージされてない不確かさを旅の醍醐味とするなら良い旅映画と言えて、自分もe-bike買ったら船で釜山にまで持ち込んで行きたいと思っているので藍子には背中を押されるような思い。

自転車映画としては藍子が最初に経費をケチってママチャリを借りていて「自転車旅舐めてるっしょ?」と思うけれど、壊れてからはクロスバイクを購入。経費は?なんて言ってはいけない。ママチャリのパートがあるのでクロスバイクに乗り換えてからの軽快さが強調されてて本作のサイクリング映画としての魅力を強める。走るコースは風光明媚で風や日差しを肌に感じそう。面白かったのは迷路状の狭い道で単調にならないように考えてロケハンされている。運転はクライマックスの電車並走を除けば素人なので過度にスピードを出すこともなく、ただ走っているだけで自転車の楽しさを伝えようとしている。こういうので良いんだよな。下品な危険運転なんてPV狙いのYouTuberにでもやらせとけばいいんだ。分かるか『プレミアムラッシュ』。自転車のスポンサーは台湾の有名メーカーGIANTで台湾を舞台にしたのはこういう事情もあるかもしれない。私が契約したe-bikeも台湾のBESVなので何だか親近感が湧いちゃうね。

気になった点ではトントンの知ってる日本語に「オバサン」があり藍子に度々使っているのだけど、それはトントンがまだ少女なので気にしないにしても互いの肌を藍子も挑発に乗って競い合うのはアニメの醜いエイジズム表現を見ているようでゲンナリ。これを面白いと思ってるならセンスがジジくさい…それと日本と台湾双方の地震支援を持ち出して日台友好アピールがあるのだけれど、こういう表面的な事だけを持ち出されるとわざとらしくていくら深さを求めてなくても白ける。口に出してはいないものの親日という言葉は今や反日と並ぶ胡散臭いワードですので。こんなアピールはないほうがマシだった。そういう訳で悪い気はしない映画であるものの、スコアはこのくらい。