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ソウォン 願いのmaverickのレビュー・感想・評価

ソウォン 願い(2013年製作の映画)
4.9
ずっと気になっていて、ようやく鑑賞出来た。本当に、本当に素晴らしい作品。愛しい一人娘を性的暴行で傷つけられた両親の話。実際の事件を基に作られており、あまりにも酷い話で暗く憂鬱になる話かと思いきや、両親や周囲の温かさ優しさに涙が止まらない。一人の少女とその家族の幸せを踏みにじった許しがたい事件を描きつつ、そこから再生へと力強く歩んで行く姿に胸がいっぱいになる。娘のソウォン役の女の子がとても愛らしく、それが余計に涙を誘う。子役とはいえ自然な演技でそこも素晴らしい。こういう所でも日本との差を感じてしまう。父親を名優ソル・ギョングが演じる。この父親には多くの人が共感することと思う。不器用ながらも真っ直ぐに娘を愛している姿に涙する。娘も年頃から、そんな不器用でちょっとダサい父親と距離を置いているのだが、でもしっかりと家族の絆で繋がっているのだなというのが伝わる。事件のせいで家族の日常は破壊されてしまう。夫婦もバラバラになりかけるが、それを繋いだのは他でもない愛する娘への想いであった。本作には様々なテーマが盛り込まれている。性犯罪者への罪の軽さを問う司法への疑問であったり、そうした被害を受けた本人と家族の苦しみ、それでも世界は優しさで溢れているんだよということなど。時に辛く苦しく悲しく、時に優しく美しく。あざとさや安っぽさなど微塵も感じなかった。作品を作る側の本作に込めた想いがひしひしと伝わる珠玉の名作である。韓国映画で、『私の頭の中の消しゴム』と肩を並べる名作だと評したい。この家族が最後にどういう選択をするのか。是非ご覧いただきたい。このような誰かを苦しめる事件がこの世の中からなくなりますように。同じように傷つき苦しんでいる人の支えや希望に、本作がなればよいなと思います。
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