小波norisuke

ナショナル・シアター・ライヴ 2014「コリオレイナス」の小波norisukeのレビュー・感想・評価

5.0
シェイクスピアが400年も前に、当時の英国を風刺して(といわれている)、プルタルコスの「英雄列伝」をもとにして書いた政治劇。舞台の監督がインタビューで答えていたとおり、現代にも通じている。人の心の本質は、いつの時代もあまり変わらないと改めて思う。

愚かな平民は貴族の敵だと嫌うコリオレイナス。彼の言葉は、実は、独裁者気取りのどこかの首相や漢字を読み間違うどこかの大臣の本音ではないか。コリオレイナスは愚民に追従を言うことを拒み追放されてしまうが、票の大切さを知っている現代の政治家たちは、「愚民」をなだめるためにしたたかに甘言を呈する。しかし、時折ボロを出すから、「愚民」の目にもお見通しだ。

平民も、怒りに任せて傲慢なコリオレイナスを追放したはいいものの、いざコリオレイナスが軍を率いて攻めてくると聞くや、自分のせいではないと、誰かに責任を転嫁しようとする。

名誉欲の塊で、息子の戦傷を誇る母親。世襲議員の何人かは、あのような母親に育てられたのではないかと想像してしまう。

見所はトムヒの美しさ。
役のためか「オンリー・ラバーズ・レフト・アライブ」の時よりもかなりがっしりした体つきで、こちらも素敵だ。
顔中血だらけで真っ赤かな中で、青い瞳
が美しく光る。怖い母親に迫られて、この青い瞳から「憐れみの汗」がこぼれ落ちる場面が圧巻だ。
小波norisuke

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