妻に先立たれて退職前の男性サージャン。夫婦仲が冷え切っているのを、愛情こめたお弁当でどうにか繋ぎ止めたい女性リラ。
リラが懸命に工夫を凝らした弁当は配達のまちがいからサージャンのもとへ。
年齢が少し離れたふたり。
弁当を介した文通が始まり、お互いの孤独にそれぞれ静かに寄り添い合う。サージャンの喪失による深い孤独。リラの、女性の生きづらさや所在なき悲しみが深々と染みた。
セリフも少ない中で、視聴中感じるはずのない匂い・香りでいろんなものを見せる映画だった。スパイスの香りで「彼女のお弁当」とわかったり、夫のシャツの香りで浮気を悟ったり、自らの香りを感じることで、「老い」や自分の気持ちを知ってしまったり。仕事への取り組み方を書類に染み付いた香りに言及することで伝えたり。
大人の、ちょっと苦味もある良い映画でした。
あとイルファーン・カーンかっこよい。素敵な役者さんです。素晴らしかった。