矢吹健を称える会

ブラック・スキャンダルの矢吹健を称える会のレビュー・感想・評価

ブラック・スキャンダル(2015年製作の映画)
3.1
 ジョニデが楽しそうに悪役を演じているのが嬉しいし、ジョエル・エドガートンも絶妙な存在感、そして脇役のくたびれ感・ちょいワル感あふれる相貌もツボを外しておらず、アラいいですねの波がたびたび押し寄せてはくるのですが、なんだろこの不燃焼感。もやもやしながら思い出したのは、そういやこの監督の前作『ファーナス/訣別の朝』(あれは脚本も監督本人が手掛けていたが)もこんな感じだったなと。すごい面白くなりそうなテーマだし、それに見合った雰囲気もあるし、たまにオオッというシーンもあるのだが、最終的には、なんか違うんじゃないかと。いまひとつだなと。

 『グッドフェローズ』はもちろん『ミスティック・リバー』や『ザ・タウン』などといった地域密着型アウトロー映画のクラシックたちを想起させる内容である。だがいろいろな要素が掘り下げられないままなので、結局ジョニデの怪演しか残らない。
 たとえばジョエル・エドガートンに焦点を当てれば「善悪ではないルールに殉じる」とか「狡賢く生きる」とかいうそれなりに誠実なテーマが浮かび上がるだろうし、ベネディクト・カンバーバッチだったら「裏社会を牛耳る兄貴がいるのに自分は政治家」というコメディみたいな話になるだろうし、ジョニデはジョニデで周囲を破滅に導く狂人一代記としてそれなりに見ごたえのあるものになっただろう。イタリア系マフィアとの抗争の一件だって、『アウトレイジ』シリーズや『ヒーローショー』のように暴力のメカニズムが作動する契機になりえたはず。なんかそういう面白くなりそうなあれこれをサラッとスル―してついでに年代もパスして、IRAに兵器提供したけど失敗して激おこみたいなよくわからん史実描写に時間を割いている。面白いかそれは。
 なんにしても、最後のジョエル・エドガートン(が演じた人の末路)にはもっとグッとくる感じにしないとダメだろうと思うのだが。

 あと、ジョニデの食卓シーンが一番印象に残っているが結局『グッドフェローズ』じゃないのかあれは。