TAK44マグナム

海街diaryのTAK44マグナムのレビュー・感想・評価

海街diary(2015年製作の映画)
3.7
生しらす、美味しいよ♪


湘南の顔とも言える土地、鎌倉を舞台に、綾瀬はるか、長澤まさみ、夏帆、そして広瀬すずという豪華キャストが織りなすドラマ。

原作はコミックですが読んだことはありません。
ですが、Wikipediaを読むかぎりアレンジはされているものの、各エピソードや、「カマドウマが苦手」「振られると果物を大量買いする」などと言った登場人物の特徴は忠実に再現しているみたいですね。

鎌倉は、思い立てばそれほど時間をかけずに行ける距離なので、やはり知った街が舞台というのは鑑賞するうえでも心持ちが違いますね。
極楽寺の駅や海に並行する134号線、建物すれすれを走ってゆく江ノ電。
たまに近くへ行くと、「ああ、鎌倉だなあ」と思います。
個人的な事で恐縮ですが、人生初めてのデートも鎌倉でしたよ。

実質的な主人公的存在の四女を演じる広瀬すずは現在よりだいぶ初々しくて、やはり可愛いですね。
情報過多の現代では「国民的女優」という万人に愛される肩書きは難しいかもしれませんが、吉永小百合のような存在になれる可能性も秘めているのでは?
この先、下手なスキャンダルよりも吟味した出演作品を重ねて、「映画女優」として大成してもらいたい一人でありますね。

幸(綾瀬はるか)、佳乃(長澤まさみ)、千佳(夏帆)の三姉妹。
十数年間前に浮気がもとで父親が家を出て、その後、母親も姉妹を置いて出て行ってしまっていました。
父親の訃報が届き、葬式に参列するため山形へとむかうと、そこで出迎えたのは父親が他で作った腹違いの妹、すず(広瀬すず)でした。

鎌倉に住む三姉妹が腹違いの妹を迎え入れるところから始まる物語ですが、物語というほど何かが起きるわけではありません。
長澤まさみが男と別れたり、綾瀬はるかが堤真一と不倫をしていたり、食堂のおばちゃんが店をたたまざるおえなくなるなどのちょっとした「事件」は起こるものの、それはあくまでも日常の範囲内として描かれます。
ただただ、三姉妹から四姉妹になった家族を、落ち着いた優しい目線で映しだし、鎌倉という古い海街での暮らしを紡いでゆくのみ。
人の生活というものは現実にはそれほど映画的な事件がおきることは無いわけで、こういった日常に寄り添ったような作品も、観る人それぞれの心に小さな波紋を広げる、ひとつのジャンルとして不滅だと思います。

鑑賞して感じたのは、この映画は「折り合いをつけること」を描いているのかな?でした。
長澤まさみは付き合っていた男に金を貸したまま振られ、折り合いをつけるように仕事にうちこみ始めます。
綾瀬はるかは広瀬すずと一緒に暮らして、父親はすずという可愛い妹を残してくれた存在として、自分たちを捨てて出た父親との折り合いをつけます。
そして、まだ中学生であるすずは自分の中で葛藤がありながらも、優しい姉たちと接するなかで、自分がおかれてきた立場や環境の辛さに折り合いをつけて、鎌倉で生きていく未来へ踏み出すのです。

悪く言えば「妥協」ですけれど、人はどこかで折り合いをつけてゆかないとパンクしてしまうでしょう。
妥協して先へ進むのもまた、生きてゆくための知恵なのだと思います。

出会いや別れを経験した四姉妹は、鎌倉の海を眺めます。
浜辺を楽しそうに歩いてゆく四人は、いつしか「本当の家族」になっていたんですね。
きっと、この先も辛いことや悲しいことが起こるでしょう。
誰の人生も同じように。
それでも、彼女たちには家族がいます。
時には反発しあうかもしれませんが、その時には本気で叱ってくれたり、慰めてくれたり、共感してくれたりする家族が、鎌倉の家で待ってくれている。
いつか散り散りになる時が来ても、いつの間にか足が鎌倉へとむかう・・・そんな海街での一瞬一瞬を切り取った、まさにダイアリーのような映画でした。


NETFLIXにて