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アイアムアヒーローのdm10foreverのレビュー・感想・評価

アイアムアヒーロー(2015年製作の映画)
3.9
【塩キャラメル】

以前観たのはまだFilmarksを始める前だったので、きちんとした感想をどこかにしたためていたわけでもなく、ただ漠然と「日本の映画もやれば出来るじゃん」と誰にともなく呟いていました。

今作は「いい意味で原作に忠実」で、また「いい意味で原作を無視する」という、漫画原作映画があるべき姿をみせてくれた気がします。
勿論評価は人ぞれぞれだろうし、言いたい事がたくさんある人もいると思う。
それはマンガ原作映画のある意味「宿命」のようなもの。
原作を読んだ人の数だけ「解釈」があって「想い」がある。
そういった作品をプロデュースする人達はまぁさておき、いざ作品にする監督には、きっとそういった想いを受容れる「度量」と、切り捨てる「肝」がないと作れないのだと思う。
それはまるで相反する事を言っているかもしれないけど、行き着くところは「作品に対する思い入れ」なんです。「愛情」と言ってもいい。

そしてそれが伝われば漫画原作モノだろうがいいものは出来るんです。
そもそも日本映画で「ゾンビ」って、ハードルが高かったと思うんです。
コメディ路線に思いっきり振り切るならそれも善しだけど、今作でそれをやったら、それこそ「原作殺し」。
あくまでも「パニック」「恐怖」と同時に「コミカル」を共存させるからこそ成立する作品なんですね。
そういった意味ではバランスがとても良かったと思います。

あざとく「コミカル」を狙いにいくとしらけてしまいがちなところを、大泉洋をキャスティングしたことで、彼の持つ「存在自体がコミカル」が充分効いていて、余計な味付けをしなくても良いくらいでした。
そもそも〔大泉洋×ホラー〕が成立するのか?という、特に北海道ローカルの彼の姿を観ている人からすれば当然のような疑問。
「水曜どうでしょう」とか「1×8いこうよ」とかの彼からは〔ホラー〕は思いつかないよね。
でも、これが良かったです。
おおよそ「サバイバル」とは対極にいるようなキャラクターだからこそ、そのパニックぶりに笑ってしまいつつも、実は「笑っちゃうくらいヤバイ状況」の裏返しでもあって。
狙ったわけではないけど、そのコミカルなテイストは十分ホラーを引き立たせる「隠し味」の要素を持っていました。かといって「じゃあ、これからはホラーだな」とならないところも彼のいいところ。
贔屓目だったらゴメンなさいだけど、本当にいい俳優さんになったな~と思います。

あと、個人的には井浦役の吉沢悠はハマリ役だったな~。いい感じでいやな奴っていう。それとカズレーザー出てたでしょ?最初は「あれ?」って思ったんだけどパンフとかも当然なくて、ネットで調べちゃった。安藤ナツは気がつかなかった・・。

全体的にお笑い芸人を多用したことで、話が重くなりすぎずアップテンポに進んでいけたのも良かったのかな。その分終末感への反動も結構あったし。

個人的には満足の一本でした。
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